中日新聞プラス
中日新聞 chunichi web
文字サイズ
中部ニュース

<文化部記者の目> 未来を創造、あきらめず

未来を見据え、すっくと立つ「サン・チャイルド」。ほぼ同型の作品が、あいちトリエンナーレに出展される=大阪府茨木市の阪急南茨木駅前で

写真

 たぶん、今後もずっと同じタイミングで行われていくだろう、二つの“ビッグイベント”がある。

 一つは三年に一度の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」。今年は八月十日に開幕する。

 もう一つは、やはり三年に一度、半数が改選となる参院選。今月二十一日が投票日だ。

 芸術祭は二回目となる今回、「揺れる大地」がテーマ。言うまでもなく、初回の後に起きた東日本大震災と原発事故が、内容に色濃く反映する。一方の参院選のテーマは何だろう。経済政策か改憲か。復興や原発は深く語られず、大震災のあったことをあまり感じさせない。

 芸術祭のポスターに使われている作品「サン・チャイルド」を今回出展する現代美術家ヤノベケンジさん(47)は、大震災で無力感に襲われた芸術家の一人。多すぎる死と、大きすぎる破壊に、何を創作すればいいのか。仕事が手に付かなくなった芸術家は多い。

 震災から五日目。自問自答の末に「今こそ芸術が必要だ」と決意した。「社会を動かすのは簡単ではない。だけど自分には物をつくっていくことしかできない」

 まずつくったのがサン・チャイルド。高さ六・二メートルの巨大こども像で、放射線防護服のヘルメットを外し、きりりと上を向く。「復活」への思いがあふれている。

 かたや参院選はどうか。震災、原発に対する政治家の発言はあいまいなことが多く、ヤノベさんにはこう思えてならない。「国民に興味を持たせず、感覚や判断を鈍らせようとしているのではないか」

 それでも、投票には必ず行くべきだと言う。「信じて行動することで変わっていく。未来をあきらめず、向き合おう」。まるで、サン・チャイルドみたいなまなざしだった。

(文・石屋法道、写真・畦地巧輝)