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アベノミクス効果、ボーナスで実感できますか?

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 多くの公務員に二十八日、夏のボーナスが支給された。総じて昨年並みのようだ。輸出が好調で、労組のボーナス要求に満額回答したトヨタ自動車は七月一日が支給日。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は日本経済に円安・株高をもたらしたが、首相は、成長戦略の目的は「家計が潤うこと」と強調する。市民のボーナスは増えたのか。家計はアベノミクスの効果を実感できているのか。来月四日公示が決まった参院選を前に、各地で聞いた。

 中部九県の三十人余にボーナスの増減を聞いたところ、最も景気のいい言葉が返ってきたのが、タクシー会社で営業職として働く岐阜県岐南町の福永吉一さん(63)だった。

 勤め先はこの半年で売り上げが5%増。ボーナスは昨夏より五万円アップした。「おかげさまで家計にゆとりができました」。今月、愛車を買い替え、念願のクラウンを手に入れたという。

 不動産会社に勤める名古屋市北区の山田豊さん(45)は「安倍政権になり仕事が増えた」。愛知県長久手市の精密機器メーカー社員五十棲丈二さん(39)も「春ごろから設備の需要が増え、業績も上がっている」と仕事の上で明るい兆しを感じるが、二人ともボーナスは横ばい。家計に景気回復の実感はない。参院選で重視するのも、引き続き経済政策との声が圧倒的に多かった。

 「うちの会社にアベノミクスの好影響は出ていない」と印刷会社に勤める滋賀県米原市の川村起市さん(41)。ボーナスは来月上旬だが、「会社の業績があまりよくないのでパッとしないのでは」と予想する。

 支給額は変わらないという富山市の後藤里恵さん(33)は「株もやらないし、楽になったとは言えない。今後は親世代のことが心配。行政はどこまで助けてくれるかが気になる」と福祉政策の充実に期待する。

 福井市の建設業、前田陽子さん(35)もボーナスは横ばい。「アベノミクスの効果は都会だけでは」と話す。

 愛知県春日井市の主婦松木たかみさん(44)も夫のボーナスは横ばいで「食品や日用雑貨は安い店を探して購入する。ちょっとぜいたくしたいと思っても、不安が先に立ち、貯金に回す」と語った。

◆国家公務員、実質横ばい

 総務省によると、国家公務員(六十四万人)の夏季ボーナスの平均は、昨年比一万三百円増の五十二万三千三百円。職員の平均年齢が上がったために微増したが、「実質は横ばい」という。

 地方では、名古屋市の一般職平均が七千二百十七円減の七十二万六千八百七十六円。人事院の給与引き下げ勧告や、職員の平均年齢の低下などで、過去三年間で最も低かった。

 民間はトヨタ自動車が組合員平均で約百万円。連合によると、製造業や流通、運輸など傘下の組合がある企業の平均は、六千百四十七円減の六十四万五千七百八円だった。

◆業績改善、恩恵まだ

 アベノミクスで家計は潤うのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミスト内田俊宏さんは「トヨタ自動車など業績が回復した一部の製造業でボーナスは増えたが、全体への波及はまだ先だ」と話す。

各銀行では、定期預金の金利を上乗せするなど、ボーナス獲得キャンペーンが始まっている=名古屋市中区栄の愛知銀行本店で

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 「円安で製造業の業績を改善させたけん引役」とアベノミクスを評価する。改善した企業は設備投資を増やし、従業員の給料も増やす。だが、自動車や電機業界の生産拠点は既に海外に移りつつあり、「企業の業績回復の恩恵が即、地域に波及するわけではない」と話す。

 東海地方の民間の給与総額はデータのある三月まで十カ月連続で減少。アベノミクスが脚光を浴びた株高も五月以降、一時の勢いはない。「円安株高の期待が薄れ、消費者マインドが冷え込んでいる。株安による景気減速の影響は選挙後に出てくる」と指摘する。

 岡地証券調査情報室長の森裕恭さんも「日本経済は成長するという希望を国民に与えた」とアベノミクスを評価する。しかし、安倍晋三首相が産業界に対して行った異例の賃上げ要請の効果には、懐疑的だ。

 実際、製造業などでボーナスは増えたものの、給与アップにはつながっていない。消費も、高級貴金属など富裕層による一点豪華主義は目立っても、「庶民の生活にどれだけ貢献したかは分からない」と森さんは話す。