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中部9県の有権者は…

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 参院選を控え、改憲への発言を抑え気味の安倍首相。中部九県の有権者の受け止めは「争点をぼかしている」「選挙に勝つためなら理解できる」…など、さまざまだ。

 岐阜県笠松町の飲食店経営、青井克樹さん(46)は「本音は改憲を前面に出したいはず。でも、票を得るために本音を控えるのは、自民党の常とう手段だ」と手厳しい。改憲が参院選の争点からぼやけそうなムードだが、石川県野々市市の僧侶、藤場芳子さん(59)は「自民党が勝てば、お墨付きを得たとしてあらためて改憲を主張するのでは」とみる。

 間もなく二十歳になり、参院選で初めて投票する津市の短大二年田中美咲さん(19)は「自民党の姿勢はずるい。投票先を決める材料のひとつになるので、改憲をやりたいならきちんと言ってほしい」。一方、愛知県豊田市の大学三年伊藤麟(りん)さん(20)は「大学生だって、会議をうまく運営するために本心を隠すことはある。正々堂々としてないのは良くないが、選挙に勝つ手法としては、ありなのでは」と理解を示した。

 割り切れない思いは改憲賛成派にものぞく。浜松市東区の衣料品店経営伊藤博文さん(50)は「憲法を時代に合わせて変えるのは当然」としながらも、「争点をぼかして、不勉強な有権者を利用しようとしているのか」。長野県松川町の団体職員前島登志夫さん(63)は「『憲法を改正して戦争をする』と、短絡的に反対する人がいるからトーンダウンした」と首相をかばいつつ、「判断をするのは国民。議論せずにふたをしてしまう方が怖い」と残念がる。

 政治主導の改憲論議には冷めた見方も。富山市で洋菓子店を営む丸山敦子さん(32)は「震災復興が一番。景気対策とか改憲よりも、すぐにやるべき課題は多い」。福井市の食品製造業、岸田和弘さん(34)も「改憲が具体的に生活にどう影響するかピンとこない。一番力を入れてほしいのは景気対策」と望んだ。

◆意味ある遠回り狙う

 浜谷英博・三重中京大特任教授(憲法・防衛法)の話 安倍首相は政治的な判断で(公約の)優先順位を見直したのだろう。有権者の理解がないまま九六条の先行改憲を無理強いしても、実現しなければ意味がない。ごり押しよりも、意味のある遠回りを狙っているのではないか。

 国民に意見表明の機会を与えるという意味で、私個人は九六条の改憲に賛成だ。「手続きだけを先行させて、中身に触れていない」という批判があるが、自民は既に改憲草案を出している。時間をかけて説明を尽くそうという判断も理解できる。

 ただ、参院選では論点をきちんと示すべきだ。自民が議席を伸ばせば改憲に大きく前進し、国の転機になる。有権者も「難しい」「分からない」と避けずに憲法を考える機会にしてほしい。

◆維新の人気急落影響

 愛敬浩二・名古屋大院法学研究科教授(憲法学)の話 九六条改憲が迷走しているのは国民の支持を得られないためだが、自民が参院選後のパートナーと考えていた日本維新の会の支持率急落の影響も大きい。

 安倍首相は九六条改憲に前向きな維新の勢力拡大を期待していたはず。ところが、共同代表の橋下徹大阪市長の従軍慰安婦をめぐる発言で状況が変わった。首相自身、歴史認識に対して米議会から厳しい指摘を受けていただけに、橋下市長と同じ路線と見られることを避け、結果として改憲がトーンダウンしたのだろう。

 しかし、今は封印しているだけで、改憲を諦めたとは思えない。選挙公約の最後に目立たないように挟み込んで国民の審判を仰いだ形にし、選挙後に本格的に進めるはずだ。