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中部ニュース

私はこれで自民系に勝ちました

◆美濃加茂市長 若手中心の人脈

◆静岡県知事 政党と距離置く

◆名古屋市長 忠実に公約守る

 安倍政権の高支持率とは対照的に、自民は地方の首長選で敗北を続けている。この地方でも、岐阜県美濃加茂市で推薦候補が敗れ、全国最年少の市長が誕生した。名古屋市長選では知名度抜群の河村たかしさんに完敗し、静岡県知事選も落とした。3人はなぜ好調・自民に勝てたのか。7月4日公示、21日投開票が確実な参院選へ波及することはないのか。識者は、有権者の政策への受け止めや投票行動で、国政と地方選挙の違いを指摘する。

 「企業誘致にすぐ取り組みたい。庁内でプロジェクトチームをつくり…」。岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長(28)は二十日、当選後初めて市議会本会議の答弁に立っていた。

 二日の市長選。市議会最大会派が擁立し、自民が推薦した元市副議長(58)との一騎打ちを制した。商工会議所青年部や、町おこしやボランティアなどの市民、市議活動で培った人脈で支持を広げた。選挙は「議会対若手商工業者」の構図になった。

 藤井さんは振り返る。「政党は関係ない。候補者の顔がみえる選挙で、一人一人の市民に思いを伝えることができた」。ソニー美濃加茂工場撤退に象徴される地域経済への危機感は、若さへの追い風になった。

 十六日の静岡県知事選では、現職の川勝平太さん(64)が自民党県連が推薦した元大学教授(57)らを破り、史上最多得票で再選した。本紙の世論調査などによると、民主党、支持なし層の八〜九割、自民党支持層からも六割超の支持を得た。

 勝因として、川勝さんは「政治家への失望が大きくなり、支持なし層が増えている」と政党への不信感を挙げた。

 初当選した前回は、民主などの推薦を受けたが、今回は政党・団体の推薦を受けなかった。対する自民県連は「参院選の前哨戦」と位置付け、組織戦を展開。農協が一部、自主投票とするなど一枚岩にほど遠かった。

 四月の名古屋市長選では、現職の河村たかしさん(64)が、自民県連が推薦した元市議(44)らに圧勝した。

 自民は石破茂幹事長や小泉進次郎衆院議員らを送り込み、全面支援。歯科医師会や医師会、農協なども元市議を支援したが、ダブルスコア以上の差をつけられた。

 河村さんは「市長給与を年八百万円に減らして、公約を守る庶民の政治をまじめにやっとる結果」と語る。全国の首長選で苦戦する自民は「国政選挙の場合は、政党対決なので勝つかもしれんが、首長選の場合は個々の対決。そこで勝てるほど市民は自民のことを支持しとらんということ」とみる。

 世論調査などから早くも自民圧勝かとささやかれる参院選の行方を、三人はどうみているのか。河村さんは「社会をどう変えていこうという報道がないため、知っとるこれまでの人(自民)に投票するしかない。増税大魔王の本家に戻る。庶民は苦しむだけ」と話す。川勝さんは「有権者は民主に失望しており、自民、安倍内閣への支持は高い」と、やはり自民勝利は揺らがないと見通す。

 藤井さんは「自民優位のムードが先に立ち、九六条の改憲など争点が問われる選挙にならないのでは」と話した。自身は当選後の三日に「自民の強い土地柄。より多くの人の協力を得たい」として自民に入党していた。

<有識者の分析>

◆地方選では市民派有利

◆政党で選ばれる参院選

 地方選での自民苦戦を識者はどうみるか。中央大の三船毅教授(政治学)は、「都市部に比べ、地方では株高円安などアベノミクスの効果が波及していない。逆に円安による燃料費高騰などで与党の支持は広がっていないのでは」と分析する。経済政策への期待を除けば、原発再稼働など個別の政策では必ずしも自民は高く支持されていないと指摘、その批判票が既成政党の推薦を受けない首長候補に流れたとみる。

 一方で参院選への影響は否定的だ。「民主は衆院選大敗の痛手から立ち直っておらず、日本維新の会も支持率を大幅に下げている。反自民の受け皿になる政党が見当たらない」

 名城大の昇秀樹教授(地方自治)は「首長選は以前、主要政党の相乗り候補が多かった。だが、少子高齢化や自治体の財政危機を背景に、既存の政党に頼らず既得権に切り込める、市民派を掲げた候補が支持を集める傾向がある」と自民苦戦の理由を語る。

 ただ「候補者個人の人柄、政策が有権者の投票行動を大きく左右する首長選とは違い、参院選は政党で選ばれる」として、やはり、参院選への影響は少ないとみる。ただし、二十三日投開票の東京都議選は「政党で選ぶ傾向が強い」として、参院選の結果を占う選挙だと指摘する。