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経済前面、またも奏功 野党は対立軸つくれず

2016年7月11日

候補者ボードを背に笑顔の安倍首相(中央左)、谷垣幹事長(同右)=10日午後9時54分、東京・永田町の自民党本部で

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 自民、公明の与党は十日投開票の参院選で、安倍晋三首相(自民党総裁)が設定した勝敗ラインの改選過半数を獲得し、「自民一強」が今後も続くことになった。景気回復が最優先だとして消費税増税を先送りし、直後の選挙で勝利につなげるのは、二〇一四年十二月の衆院選の再現だ。経済を前面に出す必勝パターンに今回も持ち込んだ。だが、経済以外の政治課題が重視された選挙区では、苦杯を喫したところが目立った。

 首相は十日夜のTBS番組で、参院選の結果について「しっかりとアベノミクスを加速せよということだと思う。国民の期待に応えたい」と述べた。選挙戦では、安倍政権の三年半で株価や雇用情勢が改善したと力説。一三年参院選、一四年衆院選に続き、アベノミクスの是非が最大の争点だと一貫して訴えた。

 首相は、消費税率10%への引き上げについて、最初に延期を表明した一四年の衆院解散前に「再延期することはない」と断言しながら、参院選の直前に「新たな判断」を示して再延期を決めた。増税を約束して選挙を戦えば、時の政権側に不利に働くことは、一二年の野田政権下の衆院選で目の当たりにしていた。

 野党にも増税の再延期に大きな異論はなく、争点として鮮明にならなかったことは、与党に有利に働いた。首相は、与党の勝敗ラインを非改選を含む過半数より厳しい改選過半数に設定し、消費税を増税できるように景気を回復させるとした一年半前の約束を破ったとの批判もかわした。

 首相はこれで衆院二回、参院二回の国政選四連勝を飾った。公約通りアベノミクスの加速によって経済を上昇軌道に乗せられれば、政権内に対抗勢力はますます現れにくくなる。今後も首相や菅義偉(すがよしひで)官房長官らによる官邸主導の政権運営が続くことは確実だ。

 一方、首相は選挙戦で改憲や原発などの争点に関しては、国民に積極的な説明をしなかった。こうした争点に絡んで対立軸が明確になった選挙区では、安倍政権はもろさを露呈した。

 東日本大震災と原発事故の影響が続く福島では、現職閣僚が落選。岩手、宮城でも自民党候補は敗れ、被災三県で全敗となった。

 環太平洋連携協定(TPP)の影響を受ける農業を基幹産業とする東北六県では、自民は一勝にとどまった。農業産出額が全国一位の北海道(改選定数三)でも、民進に二議席の獲得を許した。

 首相が遊説に足を踏み入れなかった沖縄では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設に反対する新人に、現職閣僚が敗れた。

 こうした与党側の黒星は、首相が説明を避けた主要政策が、必ずしも有権者に支持されていないことを表している。首相は過去二回の国政選で経済政策を第一に訴えたが、勝利した後には、選挙戦で明確な方針を示さなかった特定秘密保護法や安全保障関連法を成立させた経緯がある。

 (古田哲也)

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