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復興の一票、重み預かる 熊本・益城町に安城市職員が選管応援

2016年6月29日

「安城市」の腕章を着け、期日前投票を受け付ける古沢英一さん(手前)と天野亮介さん=28日、熊本県益城町で

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 熊本地震で二度の震度7に襲われた熊本県益城(ましき)町で、愛知県安城市から派遣された二人の職員が、参院選の事務作業を手伝っている。期日前投票所を訪れる有権者の中には、県外など遠方の避難先で暮らす被災住民も少なくない。職員らは、一票に込められた特別な思いを感じながら、代役を務めている。

 「候補者名を記入してください」。二十八日、損壊のため立ち入りができない益城町役場本庁舎前に立つプレハブの期日前投票所。「安城市」と書かれた腕章を着けた市子育て支援課の天野亮介さん(42)と建築課の古沢英一さん(36)が、次々と訪れる有権者らに一声かけながら、投票用紙を手渡していく。

 地震で二千五百三十二棟の民家が全壊、二十一人が死亡した益城町。発生から二カ月半がたつが、今も千九百人超が避難所で生活する。町は避難所運営などに多くの職員を割かざるをえない状況で、参院選の事務担当を担うのは、三人の選管職員のうち森崎大輔さん(38)しかいない。

益城町役場に設けられたプレハブの期日前投票所=28日、熊本県益城町で

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 安城市が職員派遣を決めたのは、五月中旬の神谷学市長の現地視察がきっかけ。深刻な人手不足を目の当たりにし、公示前の十三日から投票日直前の七月八日までの約四週間、市選管での経験がある四人を応援に出すことになった。二週間交代で二人ずつ、熊本県からの応援職員とともに任務に当たる。

 地震の影響は選管業務にも。町の有権者約二万八千人のうち、避難先が分からず「受取人不在」で返送された投票所入場券は、二十七日までに三百九十通。避難所の登録者名簿と照合するなどし、森崎さんは約八十通分を本人に手渡した。

 安城市の職員らは、投票所入場券の発送や期日前投票の受け付けを担当。的確な仕事ぶりに、森崎さんは「経験が豊富なので安心して任せられる」と感謝する。

 「投票を大事に思う気持ちをひしひしと感じる」と、二十七日から期日前投票所に詰める天野さん。住民からは「選挙どころじゃない」との声も聞こえてくる一方で、二十六日までに投票を済ませた有権者は六百六十七人に上る。今回の参院選の選挙期間は、通常より一日長いが、投開票日の二週間前としては、前回参院選の二倍に当たる。

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 四月十六日未明の「本震」で自宅が全壊した飯銅(はんどう)昭蔵さん(81)は二十八日、避難先の熊本県氷川町の長女の嫁ぎ先から、車で一時間強かけて期日前投票に訪れた。自宅の再建に向け、公費での解体を申請中だが、「最長で二年かかる」と言われている。「いつまでも居候を続けるわけにはいかない。何とか助けてもらいたい」との願いを一票に託した。

 応援派遣の天野さんと古沢さんは、宿泊先の熊本市内からレンタカーで益城町役場に通う。道すがら崩れた塀や家屋を目にすると、南海トラフ地震の被災が懸念される地元のことが頭をよぎる。古沢さんは「自分の地域で災害が起きた時に何が必要になるのか。少しでも教訓を持ち帰りたい」と話す。

 (立石智保)

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