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川内、再稼働大丈夫か 30キロ圏、拭えぬ不安

2016年6月15日

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 四月十四日の熊本地震発生後、余震が続くある日。鹿児島市内の実家から鹿児島大に通う石丸淳一さん(19)=同大二年=は、国内で唯一稼働している九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)のことが頭をよぎった。

 鹿児島市の一部は川内原発から三十キロ圏内。東京電力福島第一原発事故後、避難計画の策定を義務付けられた。だが避難計画は原子力規制委員会では審査の対象外で、実効性を疑問視する声が強い。熊本地震では道路や鉄道が寸断された。鹿児島で大地震と原発事故が起き、交通網がマヒしたら−。「みんなが一斉に車で逃げれば大混乱になる。このまま川内原発を動かしていて大丈夫なのか」

 二〇一四年十二月の衆院選以降も、安倍政権下では「原発回帰」が進んだ。一年十一カ月続いた国内の「原発稼働ゼロ」に終止符を打つ形で、川内原発1号機が一五年八月に再稼働したのが象徴的な例だ。

 それに先立ち政府が決定した長期エネルギー需給見通しは、三〇年度の電源構成に占める原発比率を20〜22%と設定。原発を新増設しないとすれば、運転を始めて四十年超の老朽原発を稼働させなければ達成不可能な数字だ。

 さらに安倍晋三首相は原発セールスも積極的に進めた。一五年末のインドとの首脳会談で、原発輸出を可能にする原子力協定締結で原則合意した。

 一方、脱原発を求める市民らは、安心な生活を守れないなどとして、再稼働の差し止めなどを求める訴訟を各地で提起。これを認める司法判断が相次いだ。

 福井地裁は一五年四月、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働差し止めを仮処分決定。再稼働は、憲法一三条などが保障する人格権侵害のおそれがあるとの異例の言及をした。その後、仮処分が取り消されて再稼働したが、大津地裁が今年三月、再び運転停止を仮処分決定した。

 こうした動きがあるにもかかわらず、政府は、規制委が認めた原発を再稼働させる方針を変えていない。七月にも四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働する見通し。

 参院選は、大災害が起きても原発を制御できるという考えに立って使い続けるのか、五年余り前の福島第一原発事故を風化させず、原点に立ち返って脱原発を目指すのかが問われる。

 参院選で初めて選挙権を得る石丸さん。事故が起きるまでは原発が身近にあることに違和感はなかったが、今はこう思う。「原発は人間には扱えないのではないか。候補者の原発への姿勢も見極めたい」

 (宮尾幹成)

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