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平和、託す先は 安保法めぐり与野党対決

2016年6月12日

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 五月下旬、港湾、航空、鉄道など各方面の労働組合関係者が都内に集まり、三月に施行された安全保障関連法で労働者が受ける影響について話し合った。口々に出たのは、「戦時動員」への懸念だった。

 有事の際、医師や建設業者、運送事業者らを「業務従事命令」で動員できる規定がもともと自衛隊法にある。罰則はないが、現実に断ることは難しい。そして、武力で他国を守る集団的自衛権行使を認める安保法で、日本は攻撃を受けなくても戦争に加われることになった。一般労働者が動員される可能性も高まったのではないか−。会場は重苦しい雰囲気に包まれた。

 日本の平和をどう維持していくのか。安倍政権が選んだ道は、日米同盟の深化だった。二〇一四年十二月の衆院選以降も、この方針で安保政策を推進してきた。

 一五年四月、日米防衛協力指針(ガイドライン)を再改定したのに続き、同年九月、安保法が成立。集団的自衛権の行使容認や、米軍への軍事支援を飛躍的に拡大させる内容だ。

 自国が攻撃された場合に反撃する個別的自衛権だけを認めてきた戦後の安保政策の大転換だが、安倍晋三首相は「絆の強い同盟により、抑止力は高まる」と主張。今後も国連平和維持活動(PKO)での「駆け付け警護」など、海外で活動を広げていく方針だ。

 これに対して多くの市民団体や学識者は、米国主導の戦争に巻き込まれ、むしろ日本の平和は危うくなると批判。安保法廃止を訴え、活動を続けている。

 また、安保法は、従来のほかの政策課題ではみられなかったほど野党の結集を進展させた。

 先の通常国会で民進(当時は民主、維新)、共産、社民、生活各党は安保法廃止法案を共同提出。参院選でもこの四党は、安保法廃止を柱にした共通政策を掲げる。従来の国政選挙は、各野党が独自候補にこだわって政権批判票が分散したが、今回四党は、勝敗を決する三十二の一人区すべてで統一候補を擁立した。

 安倍首相(自民党総裁)は野党結集を「野合」と批判し、「平和と安全を、自公と民共のどちらに託すのかを選ぶ選挙」と訴える。参院選は、この二つの勢力の対決を軸に、安保法による日米同盟の深化が平和を高めるのか、危うくするのかを問う選挙になる。

 高知工科大二年で、国籍取得した元在日中国人を父親に持つ程和毅(ていかずき)さん(20)は安保法に危機感を抱く一人。平和学者の講演を聴くなど知識を深めている。

 「戦争になれば、父や知り合いが敵として扱われる危機感は幼いころからあった。戦争に近づいている今は一層、緊張感を持っている」。国際社会で生きる若い世代にも、安保法は重大な問題だ。

 (横山大輔)

主な政党の公約

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