長野

<争点の現場>(4) TPP

2016年6月17日

◆農業の魅力消さぬ策を

 六月上旬、松川村の「やまし平林農園」のリンゴ畑で平林慎也さん(26)は、主力品種の「ふじ」の摘果をしていた。五センチほどの青い実から大きく育てるもの以外を間引く、秋の収穫に向けて大事な作業だ。

 農園のロゴマーク入りの黒のポロシャツを着て、イヤホンで好みの音楽を聴きながらはさみを動かす。「農業は魅力的でかっこいい仕事だと思う。昔のイメージみたいに汚い姿ではなく、おしゃれも大事。オフィスで働く人と同じでしょう」と平林さん。

 リンゴ農家の四代目となる決心をしたのは三年前。家族らと三ヘクタール弱の畑を管理し、十五種以上のリンゴを産地直送で各地に販売する。父重宏さん(59)から農園主の仕事を学ぶ一方、フェイスブックなどインターネットの交流サイト(SNS)で農園での日々を紹介する。「若い農家が農業の魅力を伝えなきゃいけない。いつか高校生、大学生の就きたい職業第一位にさせるつもりです」と笑った。

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 村には二ヘクタール超の農園を所有するリンゴ農家が多く、古くから産地直送などで販売先を広げてきた。これからの農業を担う二十、三十代の後継者も多く、恵まれた環境ではある。それでも不安が消えないのが、環太平洋連携協定(TPP)の行方だ。

 昨年十月に日本と米国など十二カ国が大筋合意し、二月に各国が協定文に署名した。しかし、通常国会で審議が紛糾し、協定の承認や関連法案の成立は先送りになったまま。参院選では再び賛否が争点になる。

 県はTPPによって県内農林産物の生産額は二十四億円減少すると試算する。JA長野中央会は減少額を十六倍の三百九十二億円としており、見通しははっきりしない。

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 「味はどこにも負けない。外国産よりちょっと高くても、新鮮でよいものを選んでもらえる」。平林さんは、村の若手農家たちと東京のイベントで松川村産リンゴのアピールに力を入れ始めている。

 村のリンゴ農家はそれぞれ数百人の顧客がいるため、当面はTPPの影響は少ないと見るが、国の農業振興策の方向性には疑問を感じている。

 平林さんは一本一本の木の個性に合った栽培をして、こだわったリンゴを国内の顧客に売り込みたいと考えている。国は農地大区画化を補助し、効率的な栽培による大量生産と輸出の振興による「攻めの農業」を促進するが、安売りで勝負すると農家の共倒れにつながり、農業に魅力がなくなっていくのではないかと不安がある。

 参院選を前に、政治は日本の農業の将来像と方針を決め、農家が生き残る対策をTPP発効までに打ち出してほしいと願う。「ことし植えたリンゴの木は十五年、二十年後まで実が成る。今、リンゴ農業の戦略が迷走すると、それだけの期間にわたって影響するんです」。平林さんは、ずっと先の日本の農業を考えている。

主な政党の公約

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