長野

<18歳選挙権を聞く>(1) 松本工高教諭 有賀久雄さん(57)

2016年6月7日

◆教室の身近な話題に

 −民主主義の担い手を育てようと高校生の模擬投票に取り組んできましたが、十八歳選挙権の効果をどう考えますか

 今までは高校で政治や選挙を学んでも、卒業して選挙権を得るまでに二年間が空いてしまいました。私自身がそうでしたが、大学で一人暮らしをしてサークル活動に熱中し、ようやく二十歳になっても選挙に関心がなくなってしまう。それが、二十〜三十代の投票率が低い一因になったのでしょう

 十八歳選挙権の導入によって授業や教室で選挙が話題になることでしょう。高校生は選挙がグッと身近に感じるはずです。初めての投票に家族と一緒に行けるのも素晴らしい。ぜひ両親と投票所まで一緒に歩いてほしい。高校生は大人になった誇らしさを感じ、家族は子どもの成長を実感できて大事な場面になります

 −心配な点はありますか

 家庭で新聞を購読していない生徒が三分の一ほどいます。テレビニュースも見ないので、ニュースを知るのはスマホが頼りのようです。何も知らないで、いきなり投票ではまずい。今からでも、世の中の出来事に関心持つよう、折に触れて伝えていきたい

 −これからの主権者教育はどうあるべきでしょうか

 模擬投票をやらなくても実際に現実の投票ができます。教育は次の段階に入ったと感じています。松本工業高では昨年、松本市議を授業に招き、市民の要望が実現する仕組みや、議員が普段どんな仕事をしているか説明してもらいました

 これからは地方議会と連携し、傍聴に行ったり、議員に高校生の意見を聴いてもらったりできます。地域の課題を調べて、高校生の目線で市町村議会に新たなアイデアを提案する「模擬請願」など、さらに実践的にできるのです

 −教育を変える効果もありますか

 日本では、大人から正解を教わり覚える受験のための教育で、子どもたちは優秀ですが、自分自身の意見を言うのに自信が持てなかったりします。しかし、選挙で誰に投票するかは正解がない。選挙権を得たことで自分たちも社会の一員なんだと自信を持ち、一番大事だと思う争点を考え、答えを出してほしい

 −若者と共に社会も変わるきっかけになりますか

 日本でもようやく、十代の若者が政治参画の権利を得ることができました。「子どもの権利条約」で保障されていた権利が一つ、尊重されたと見るべきです。子どもや若者が、大人と同じ人権を持つ者として尊重される社会に近づかなければならない。次の目標は「十八歳被選挙権」になりそうです。だって、外国には高校生議員もいますから

     ◇

 七月十日投開票の参院選から国政選挙で初めて一票を投じる権利が十八歳以上に引き下げられる。高校生の校外での「政治活動」が解禁され、政治や選挙について学ぶ主権者(=政治)教育の重要性も高まる。若者の低投票率に変化は見られるのか。県内で政治や選挙、教育に関わる五人に課題を聞いた。

 <あるが・ひさお> 1959年、松本市生まれ。83年から社会科教諭を務め、塩尻志学館、松本筑摩、田川などの各高校で勤務。昨年から松本工業高で教える。2000年の県知事選の際に辰野高で授業に模擬投票を採り入れて以来、衆院選、参院選などのたびに行っている。04年に中日いきいき学習賞を受賞。

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