長野

<長野選挙区情勢> (下)民進

2016年6月4日

 五月の週末、買い物客らでにぎわうJR長野駅前に、民進、共産、社民の野党各党や市民団体の名前が書かれたのぼり旗が、ずらりと並んだ。

 「野合で結構。一九九四年の自社さ政権で、自衛隊や日米安保を認めていなかった社会党と組んだ自民党こそが野合だ」。参院選に民進公認で立候補を予定している新人の杉尾秀哉(58)が声を張った。

 野党共闘が野合だという声への反論だ。聴衆二百人を前に、安全保障法制の廃止と改憲への反対姿勢をアピールしつつ「安倍首相の一強体制に立ち向かい、一議席を勝ち取るには、県民の総力を結集するしかない」と野党共闘を訴えると、拍手がわき起こった。

 通りがかった一団から「あっ、キャスターだった人だね」と声が上がった。元TBS記者で報道番組を長年担当し、顔はお茶の間に浸透している。

 政治記者時代に縁があった民進県連代表の北沢俊美(78)から直接、後継指名された。出馬を決めてから約五カ月。杉尾は「ここまでの手応えは悪くない」と話す一方、「参院選の候補者と、まだまだ認知されていない」と引き締める。

 兵庫県出身で落下傘候補とも批判された。「私はIターン候補」と県への移住者になぞらえ、「よそ者だからこそ信州の良さ、信州人の気骨が分かる」と強調する。演説には高森町の市田柿の絵入りネクタイを着けて臨んだ。三年前からPR大使を務めていた縁だ。

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 長野選挙区は今回から改選数が二から一へ削減されたことに加え、野党共闘が実現したことで、自民と旧民主に指定席が用意されていたこれまでとは全く異なる選挙戦となる。

 力強い援軍は共産支持層だ。五月二十二日に松本市の松本城公園で開かれた同党の大演説会には、党発表で三千人の観衆が杉尾の演説を聴いた。共産関係者は「共産の立候補予定者を下ろして民進に協力している。比例では共産候補に協力してほしい」と相乗効果に期待する。

 杉尾陣営は一方で、労組の集会や工場などを訪れ、民進本来の支持母体の連合への浸透も図る。同月二十一日に松本市で開かれた連合長野の総決起集会で杉尾は「あくまで選挙活動の基本は、長年かけて培った連合と民進党の関係だ」とアピールを忘れなかった。

 連合と共産は長い対立の歴史があり、陣営はバランスに気を配りながらの戦いになる。「野党共闘の票が単純に足し算になるとも思えない。逃げる票もある」(連合関係者)との声もあり、陣営幹部は最後に鍵を握るのは無党派層とみて「阿部守一知事が初当選した二〇一〇年の選挙がモデルになる」と語る。

 阿部は旧民主、社民などの推薦を受け、自公が応援する候補と対決し、無党派を中心に票を集め、約五千票の僅差で振り切った。陣営は集会やつじ立ちを数多くこなして杉尾の露出度を増やし、無党派層の掘り起こしに力を入れていく。(文中敬称略)

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 この連載は沢田佳孝、今井智文が担当しました。

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