福井

<課題、問う>TPP 地域の実情捉え対策を

2016年7月1日

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 昨年十月、日米両国など十二カ国は環太平洋連携協定(TPP)交渉で合意に達した。二〇一八年には主食用米の生産調整(減反)廃止という大きな農政の転換も控え、山積する課題に県内農業の将来像はかすみがちだ。

 「コメの価格への影響はない。国益は守り抜いたと考えている」。六月二十五日夜、森山裕農林水産相は坂井市のJA花咲ふくい本店で四百人の農業者にTPP交渉の「成功」を強調した。続けて「皆さんの不安に応える対策は、しっかり打たせていただく。日本の貿易拡大に向けてご理解を」とも述べた。

 だが、あわら市の農事組合法人で働く男性(65)は「どうなるのか、さっぱり分からない」と冷ややか。減反廃止に向け、政府与党が掲げる飼料用米への栽培転換へも「畜産県ではない福井では需要がない。国は地域の実情を見てない」と厳しい。

 近年の県内農林水産物の産出額は七百五十億円で、うち二百七十億円がコメ。県の試算では、TPP発効後十六年目には農林水産物全体で十六億五千万円から十七億三千万円減る見通し。安価な輸入米の流入で、コメへのダメージを十五億二千万円とはじく。

 県内農家の九割近くは兼業農家だ。坂井市の男性(65)は「TPPや減反もあるし息子に田んぼは頼めない」とため息をつく。若いころは玄米六十キロ当たり二万円超だった米価は半減している。会社勤めの給料で買ったコンバインを使い、体力が続く限り続けるつもりではいる。農業の効率化を図ろうと国は一四年度から農地の集積を進めるが「地域事情もある。そううまくはいかない」とぼやく。

 農水省の一四年調査では県内農家一戸当たりの年間の総所得四百二十八万円のうち、農業所得は二十三万円。残りは年金収入や給与などだ。農業者の平均年齢は七〇・二歳と、全国で三番目に高い。

 国のTPP対策予算を受け、県は一六年度当初予算(一五年二月補正を含む)で前年度比二十二億円増の五十一億円を計上。人材育成や販路開拓など二十三事業に取り組む。

 一方、TPPを追い風と捉えるのは眼鏡産地、鯖江市の業者たち。米国が眼鏡枠などの関税2%を撤廃する見通しを示しているからだ。レンズメーカーの営業部長(49)は「今の売り上げの六割は海外。世界は日本の良いモノを求めている」と自社の技術力に自信をみせる。

 ただ、英国の欧州連合(EU)離脱問題に対して不安も抱く。眼鏡枠メーカーの総務課長(45)は「海外展開を支援するなら国は先々の見通しを早く示し、商売の土台をしっかりさせる政策を」と注文する。

 (北原愛)

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