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能登半島地震特集

被災地に生きる(6) 規制続く孤立集落

山肌が崩れ落ち、通行規制が続く深見地区の海岸道路=石川県輪島市門前町で

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道路網

 「どこにも行けず、山で暮らすしかないと腹をくくったよ」。散乱した家具を片付けていた藤原透さん(65)は、手を休めて振り返った。自宅がある石川県輪島市門前町の深見地区は、能登半島の西端、海岸沿いにある三十七世帯、八十六人の小さな集落だ。能登半島地震で孤立し、発生から一カ月以上たっても出入りは規制されている。

 集落と市街地を結ぶ海岸道路は八カ所で寸断。最もひどい場所では約百メートルにわたり崩れた土砂や岩で埋まった。迂回(うかい)路の林道も路肩が崩壊した。「道路がなくなると手足をもがれたよう。大切さが身に染みた」。藤原さんは妻と義母とともに漁船で集落から避難した。

 その後、林道、海岸道路の順に仮復旧した。それでも、通行時間は制限されている。避難所などから帰れるのは一日数時間。藤原さんは「高齢者にとっては家に行くだけで負担。道を通して一刻も早く戻れるようにしてほしい」と訴える。

   ◆  ◆

 災害時も移送の主力は道路。しかし、輪島市の地域防災計画は耐震補強や孤立を防ぐ都市設計を具体的に盛り込んでおらず、優先的に確保する道路も決めていない。

 今回の地震では通行止めが相次ぎ、深見のように孤立する集落が出た。しかし、市は「数十年に一度の災害のために道を補強したり、造ったりするのは難しい」と費用面などで二の足を踏む。

 被害が出たのは市が管理するやや細い道路だけではなかった。県が災害時の輸送で最も重視していた「一次路線」の能登有料道路も崩壊。復旧までに一カ月を要した。

 崩れたのは、土を盛って上に道路を通した区間。国土交通省が一九七二(昭和四十七)年度に示した指針で設計し、防災点検は九六年度版の要領で行っていた。橋の上に道路を通す区間は九五年の阪神大震災をきっかけに耐震性が強化された。しかし、過去の教訓が生かされないまま、被害が出た区間もあった。

 金沢大の高山純一教授(交通工学、都市防災計画)は「一次路線は、どんな災害でも途絶しないものを造ってきたはずだ」と問題視し、地盤改良の必要性を訴える。孤立対策も「きちんとした道路がもう一本あれば、かなりの確率で防げただろう」との見方を示す。

記者の目

 道路の耐震補強にも“格差”が存在するという。「被害の規模を考えたら整備が優先されるのは大都市圏。地方は遅れるんです」。ある行政関係者はため息をつく。

 だが被害の大きさは、影響する人の数だけで測れるとは限らない。八十歳を過ぎた藤原さんの義母は約一カ月、悪路の林道を使って孤立した自宅に通った。片道約一時間。酔い止め薬を飲んで車に揺られたという。

 高齢化が進み、車社会の地方ほど、道路が寸断された際の影響は大きい。行政は「全部を補強しろと言われても…」とお茶を濁す。それだけでは情けない。国と地方自治体は一体となって、基準見直しと整備を進めるべきだ。 (能登通信部・上野実輝彦)

  道路被害  能登半島地震では、能登有料道路など石川県管理の18路線と、輪島市管理の市道や林道計63路線が通行止めになった。4月30日現在でも県管理の1路線、市管理の39路線が通れない。いずれも本年度内の開通を目指して復旧作業が続いているが、具体的な開通見通しは立っていない。

 

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