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「北陸発」Vチューバー 会いに来て 

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 自分の声と動きに合わせて、架空のCGキャラクターを動かして動画を配信するVTuber(Vチューバー)が人気だ。パソコンとカメラがあれば、全国どこでも配信できる。では、北陸は? バーチャル世界を探してみると、そこには強烈な個性を発揮している石川県民たちがいた。 (堀井聡子、小川祥)

配信の仕組み 声や動き アバターと連動

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 素顔で配信する「ユーチューバー」とは異なり、アバター(化身)と呼ばれるキャラクターを画面に映し出して、動画投稿サイト「ユーチューブ」などに配信する。日本発祥の文化で「バーチャルユーチューバー」とも呼ばれる。

 パソコンにつなげたカメラに向かって、配信者が動いたり話したりすると、カメラが顔や口の動きを読み取ってアバターも同じ動きをする。画像はイラストレーターに委託して作ってもらったり、専用ソフトで自作したりする。

 平面や3Dのアバターがあり、高機能な機器を使えば全身の動きを投影できる。個人で配信する人が多いが、企業が出資してタレントとして起用する場合もある。収入源は、視聴者から「スーパーチャット」と呼ばれる電子決済の投げ銭や、ファンが月額料を払えば限定配信などの特典が受けられるファンクラブのようなシステムがある。

 データ分析のユーザーローカル(東京都)の調査によると、九月五日現在で国内のVチューバーは九千人。二〇一八年三月は千人で、この一年半で急増した。一六年に誕生した世界初のVチューバー「キズナアイ」は、ファンであるチャンネル登録数が二百六十七万人で、テレビ出演や写真集も出版している。

実況や雑談で「心動かしたい」

秋里夢女子(みのりゆめこ)さん

 子どものころから、恋の相手は2次元のキャラクターだった。ゲーム「刀剣乱舞」の男性キャラが好きすぎて、「彼の隣に並びたい」という夢を実現させるため、昨年9月にVチューバーになった。その姿は、「よしなに」と書かれたTシャツと紫のジャージーに、「夢」と書かれた布で顔を隠した女性。裾や袖を半端にまくり、リラックスした雰囲気を出した。

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 奥能登在住。動画は「こんばんわっしょーい!」の掛け声で始まり、ゲーム実況やお酒を飲みながらの雑談が中心だ。夏には、星稜高校(石川県)が戦った甲子園決勝戦のテレビ中継を実況した。チャンネル登録数は5000人。自分のグッズも販売しており、いつも自宅から一番近い3キロ先のコンビニで配送している。

 元は大学で演劇を学び、声優やナレーターを目指していた。「限界集落でも、インターネットがあれば日本や世界中の人と会話できるのが魅力」。過去には米国の人がコメントしたり、視聴者が奥能登に旅行に来てくれたりした。「一人でも心を動かせられたのがうれしかった。いつか秋里夢女子としてテレビのナレーションをして、地元をPRしたい」と野望を語った。

子育てママ 夢は「金沢の顔」

まる子さん

 福井県出身、金沢市在住、富山県にママ友多数という生粋の北陸育ち。2人の子どもを育てるアラフォー主婦で、アバターが持つバッグからはネギがのぞいている。「子育てしながら在宅で仕事をしたい」と考えていたとき、出合ったのがVチューバーだった。

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 子どものビデオを撮るうちに動画編集にはまり、友人から「動画の仕事をしたら」と勧められた。「Vチューバーはかっこよくてかわいい。子どもに見られても胸を張れるチャンネルにしたい」と、2017年に生活のお役立ち情報をまとめた「まるわかりチャンネル」を立ち上げた。

 動画では日用品のレビューや、ダイエット体験談などを紹介している。次第に「料金を払うので製品をレビューしてほしい」と企業側から依頼されるように。「編集は大変だけど、『すごく役立った』とコメントをもらえるとうれしい」。表情をアバターに投影させるため、口や眉の動きをはっきりさせる必要があり「おかげでほうれい線が減ったかも」と笑う。

 息子は友人に「ママはVチューバー」と自慢しているらしい。「地域のことを発信して、金沢の顔になりたい」と夢は膨らむ。

ヘビなど飼育「正しい情報を」

たつのさん

 金沢市在住でヘビやトカゲなど8種10匹を飼育している看護師。爬虫類(はちゅうるい)の飼育法や特徴などを紹介しようと昨年8月にVチューバーとしてデビューした。

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 爬虫類を買い始めたのは3年前。飼育法の情報が手に入りにくく、ブリーダーに聞きながら試行錯誤を重ねていくうちに、密猟や絶滅危機などの爬虫類を取り巻く問題も知った。「正しく分かりやすい情報を発信し、理解を広めたい」

 爬虫類を紹介するユーチューバーはすでにいたため、差別化を図るため頭にカメ、肩にヘビを乗せたアバターが紹介する形に。かわいらしい声の主だが、実は男性。「親しみが湧きやすいように」と女性キャラを演じる。実在する市内の爬虫類バーなどを背景にまったりとした空気感の中、エサを食べる様子を発信したり、飼育に必要な器具の使い方を紹介したり。

 動画制作のための取材で、動物園の飼育員やブリーダーと知り合うこともでき、知識を深める機会も増えた。今後はカメの繁殖の様子を発信することも考えている。「収益化は考えていない。爬虫類の持つ魅力をたくさんの人に知ってもらうために発信しているだけなので」

◇◇ ふたりの深ぼり ◇◇

 「Vチューバー」。名前は聞いたことがあったが、どんなものかは詳しく知りませんでした。食わず嫌い?

 爬虫類には少しとっつきにくいイメージを持っていました。たつのさんのキャラクターがかわいらしい表情でエサに食い付く姿を紹介する動画を見ると、どこかかわいげを感じます。何より爬虫類への愛情がビシビシ伝わります。

 仕事をしている人でも始められるVチューバー。新聞社もニュース紹介に取り入れても面白いかもしれません。 (小川祥)

 着ぐるみのように、素顔を出さずに何かを演じている人をよく「中の人」と言いますが、Vチューバーにその表現は望ましくありません。動画を再生してみれば、そこにいるのは姿や声、個性が確立された「個人」。個性的すぎて、もはや個性が擬人化したような、不思議な存在でした。

 秋里さんは「アニメのキャラは話し掛けてくれないけど、Vチューバーとは会話できる」と、ファンの一人として魅力も語ってくれました。これからどんな人たちが生まれてくるのか、楽しみです。 (堀井聡子)

 

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