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AIは特ダネの夢を見るか?

北陸先端大 インタビューロボ研究進む

院生2年の三浦郷さん(右)にインタビューするペッパー

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 いつか、ロボットが記者の仕事をする日が来るかも−? 石川県能美市の北陸先端科学技術大学院大学で、インタビューロボットの研究が進められている。まさか、もうそんな時代が来ているなんて…。一体どんな仕組みなのか。記者歴6年目のポプレス編集長(29)と、未来のライバル(?)の仕事ぶりを比べてみた。 (堀井聡子)

 「こんにちは。本日のインタビューを担当するペッパーと申します。よろしくお願いいたします」。人型ロボット・ペッパーと迎えてくれたのは、プログラムを組んだ博士前期課程二年の下野純治さん(24)。今回、本紙朝刊の人物紹介欄「この人」の取材で話を聞くという想定にした。

手ぶりも交えて

プログラムを組んだ下野純治さん(右)とインタビューロボのペッパー

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 早速、お手並み拝見。インタビューされる役の同二年三浦郷さん(24)と対面したペッパーは、「まず、入学する前の話を聞かせてください」と質問した。手ぶりを交え、話し方も滑らかでいい出だし。三浦さんは「入学前は工学部の材料工学を勉強していました」。次の質問は…と思いきや、ペッパー、黙り込んだ。聞き取れなかったのか。

17秒間の沈黙

 実はこの時、マイクで相手の声を、カメラで体の動きを認識し、そこから話し手の意欲度を人工知能(AI)が判断していた。大きな声で長く話し、身ぶりがあれば意欲的と判断してさらに質問する。そうでなければ、話に乗り気じゃないと察して話題を変える。そうやって事前に設定したどの質問をすべきか選んでいる。判断にかかる時間は三秒以内だが、読み込みに少々時間が必要だ。ペッパーが「大学時代はどのような勉強をしていたのですか」と次の質問をしたのは、十七秒後だった。

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 いくつか質問した後、「では、どんな研究をしているのか教えてください」と、いよいよ本題の質問が来た。三浦さんは「機械学習を用いて議論の質を推定する研究をやっています」と回答。意欲があれば「なるほど。とても興味深いですね」と言って深掘りする質問をしてくれる予定だ。

話し方滑らか 意欲判断に課題

いざ深掘り質問

 沈黙の後、「少し話題は変わりますが、どんな趣味をお持ちですか」。あれ、もういいの? 乗り気じゃないと判断したらしい。記者としては、ここは詳しく聞いてほしかった。だがその後の「大学院を修了した後、どのような仕事に就く予定ですか」という質問では、意欲的と判断。「大学院で学んだことは、社会でどのように役に立つと考えますか」と深掘りした。

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 ペッパーと同じく約五分半、編集長もインタビューした。どんな研究をしているのか。具体的には。三浦さんはさっきより多く手を動かし、長文で答えてくれた。途中、聞きたいことが頭の中でこんがらがってしまった。「それってどういうこと」と三浦さんから聞き返される。ああ、ロボットならこうはならないのに…。

 一人と一体からインタビューを受けた三浦さんに感想を聞いた。「ペッパーの言葉は聞き取りやすく、専門用語も滑らか。ただ長い間が不安。堀井さんは相づちを打ってくれるから話を求められていると感じました。研究内容ももっと話したかった」。ペッパーの話を引き出す技術は、まだまだかな。

 質問で話の先を促したり、相手が話したくなるよう相づちを打ったり。これって確かに、記者の仕事と同じだ。質問攻めにするのでは駄目。相手に話してもらわないことには、記事は書けない。ペッパーを見ていて、「記者の仕事は聞く仕事」ということに改めて気付かされた。私も負けないよ、ペッパー!

博士課程2年 下野さん 「表情読む力必要」

下野純治さん

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 研究は、同大の知能情報学専門の岡田将吾准教授(39)が二〇一六年から取り組み、研究室に所属する下野さんが引き継いだ。「研究についての質問をもっと用意していたのに、こいつ言うことを聞かなくて…」と苦笑するが、相棒に向けられるまなざしは優しげだ。

 「インタビュアーの話を聞こうというしぐさがないと、人はなかなか話せない。ペッパー相手だと、話し手のジェスチャーが少なくなってしまう」。話を聞くためには、話しやすい雰囲気づくりが大切だ。相づちもその一つ。「間が三秒空くと、フリーズしたと思われる。適切な間で相づちを打てるようにしたい」と課題を挙げた。

 人間とロボット、それぞれの取材をどう見たのか。「面白かったのは堀井さんが質問で詰まったとき、話し手が聞き返して助けようとしたことです。ロボット相手では助けないで待ってしまう」。人間だからこそ助け舟を出そうとするのだ。

 どうすればペッパーの腕前が上がるのか。「音声と動きだけでなく、表情からも判断できれば精度が上がる。相手の話も理解できれば、内容に応じて『具体的には?』と掘り下げた質問ができるのでは」。伸びしろはまだまだありそうだ。

岡田将吾准教授 「医療分野にも可能性」

岡田将吾准教授

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 「うまく相づちを打って話を引き出す聞き上手なロボットを作りたい」と岡田准教授は夢を語った。これまで、面接や討論の場面で人間のコミュニケーション能力を数値化する研究を行ってきた。

 ロボットによるインタビューを思い付いたのは、ロボットが音声を認識するのが苦手だからだ。確かに、スマートフォンで音声入力すると、違った言葉に変換されることがしばしばある。「相手を観察しながら、会話の主導権を握れるのはインタビュー」と考えた。

 性能が向上すれば、他の場面にも応用できる。「カウンセリングで患者の話を聞いたり、高齢者の話し相手になってあげたり。長話や同じ話を繰り返しても、ずっと聞いてあげられる」。一人暮らしのお年寄りも増えている中、将来はロボットが日々を彩ってくれるかもしれない。

 さまざまな場面で、AIなど最先端技術が活用されるようになった。ロボットはどこまで進歩できるのか。「機器が故障しているか判断するような、ルールがはっきりしている作業はロボットにもできる可能性がある。でも、会話にはルールがないので難しい。だからこそ、その研究にチャレンジしたい」

〜ほりいの深ぼり〜

 人間の感情を数値化する。そう言われると無味乾燥な印象を受けるかもしれない。でも、それは人間を深く理解したいという思いの表れではないだろうか。

 人間にしかできないこと。ロボットもできること。AIやロボットのことを研究したり考えたりすることは、人間への理解を深めることでもあると感じました。将来もし後輩になったら、私の話も聞いてね、ペッパー。

 

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