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ハラスメント どう向き合う 世代による認識の差 20代が解決策を探る

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 前財務次官によるセクハラ問題や、監督によるアスリートへのパワハラ疑惑など、2018年はさまざまな「ハラスメント」が話題になった。国内でハラスメントという問題が認知され始めて、まだ30年。世代によって認識が異なるのでは? 記者を含む石川県内の6人の20代が、どうすれば幅広い世代が一緒に気持ち良く過ごせるのか話し合った。 (堀井聡子、竹内なぎ)

嫌と言える環境が大切/ポジティブに捉える

型にはめず1対1の関係に

 竹内 皆さんは職場などで「これってハラスメントかも」と感じた経験はありますか?

 出口 若い女子という理由で、飲みの席に呼ばれることがありますね。

【左から】金沢市の会社員 出口未由羽(みゆう)さん(28)、小松支局 竹内なぎ記者(27)、ポプレス編集長 堀井聡子記者(29)

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 本田 大学生の友人から、教授の態度が大学院に進学する学生と就職する学生に対して違うことがあるって聞きました。

 大西 年配の男性患者に手を握られたことがあって、いやでした。年上の女性の同僚に話したら「若く見られて良かったじゃん」と言われて、さらに嫌な気持ちがしました。

 S(匿名) 仕事の同期が、上司から「指導だから」といって、やる必要のない仕事を押し付けられたそうです。

     ◇

 竹内 二十代と年長者の間で、ハラスメントに対する認識が違うのかな。ギャップを感じたことはありますか?

 堀井 ハラスメントをしてしまう年長者は、どう考えているんでしょうね。

【左から】能美市の医療事務 大西由果莉(ゆかり)さん(25)、白山市の大学職員 本田彩子さん(23)

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 大西 冗談のつもりなのかもしれないですね。

 S 悪気はないと思う。そして周りもキャラクターだと思って諦めている。

 竹内 周りが注意しないのもハラスメントを助長しているのでしょうか。

 出口 年を取ったということを受け入れられていないのかな。

 全員 なるほど〜。

 堀井 自分をどこから中年と認識するのだろう。若者の考え方と差がついていることに気付かないのかもしれないですね。

 竹内 私たちも気を付けないといけないですね。そういえばプライベートなことを話すのに抵抗があるのはどういう場合でしょう。

 大西 私は全然平気だけど、嫌だと思っている人もいますよね。

 出口 何でも言い合える関係ができている人なら、何を言われても悪気があると思わない。結局人によるのかな。

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 S どう受け取られるか分からないので、言う方も怖い。自分も女性に「彼氏いる?」などと聞かないようにしています。

 堀井 プライベートの話題も仲良くなる手段の一つだから、難しいですね。ちなみにハラスメントを過度に意識されて、コミュニケーションが取りづらくなったことはありますか?

 S 上司が年下の後輩への指導方法について「若い子はすぐパワハラだと思っちゃうから」って、自分に相談してきました。

 竹内 記者へのセクハラが話題になったとき、取材相手から事ある事に「これってセクハラじゃないよね」って言われましたね。

 出口 飲み会に特定の部門の女性を誘わないというルールを設けている会社があると聞きますね。

 全員 え〜!

     ◇

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 竹内 世代間の認識の差を埋め、互いに気持ち良く過ごすにはどうすればいいでしょう。

 大西 相手の中身を変えるのは難しい。嫌なことを嫌だと言える環境作りが大切だと思います。あと、セクハラは、女性だけが被害者ではなく、どの性別にも起こり得ることを忘れないようにしたいです。

 本田 言葉のハラスメントは受け取り方次第。嫌がらせかなって疑ってかかるのではなく、ポジティブに捉えるようにしていけば人生楽になると思います。

 出口 年代や男女といった型にはめると食い違いが起きる。その点、二十代には個で人を見る考えの人が多いのかな。相手を否定せず、一対一の人間関係として捉えていくしかないと思います。

 大西 仕事で会う患者さんには、自分のスペースに入られすぎないよう立場を考えて線引きすることも重要だと思っています。

 S 性別や国籍、外見など変えられないことに対して発言するのは良くない。自分が年長者になったら、部下の世代の背景を知ろうとすることも大事かな。

ハラスメントとは…

 地位や立場を利用した嫌がらせ。よく知られるものとして「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」や「パワーハラスメント(パワハラ)」、「マタニティーハラスメント(マタハラ)」などがある。「○○ハラスメント」という用語は現在、40種類程度あるとされ、主なものは

 ▽アカデミックハラスメント(アカハラ)…大学教授などから学生に対し行われるハラスメント

 ▽ソーシャルメディアハラスメント(ソーハラ)…上司から部下へ友達承認の強要など、会員制交流サイト(SNS)を通じて行われるハラスメント など

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価値観の違い 語り合う場を

ハラスメント対策コンサル会社・稲尾さん

 ハラスメントの歴史は平成とともに歩まれてきた。日本で初めてセクハラを訴えた裁判が行われたのは1989年。ハラスメント対策のコンサルティング会社「クオレ・シー・キューブ」(東京)の執行役員稲尾和泉さんは「80年代から女性差別をなくそうと国連が動き始め、日本にも広がった」と説明する。

 同社は「パワハラ」という言葉を2001年に初めて提唱。「職場にあるさまざまな力関係で誰かを不当に傷つけることが、ハラスメントの構図になっている」

 認識が広がるにつれ、新たなハラスメント用語も生まれた。中には香水など匂いで周囲に不快感を与える「スメルハラスメント」もあるが「体質で体臭に悩んでいる人もいる。それをハラスメントと決め付けることが人権侵害になる可能性もある」と、安易にハラスメントに関連づける危険性も指摘する。その上で「ハラスメントで、被害者の能力が発揮できないことが問題だ」と強調した。

 厚生労働省によると、17年度に全国の労働局と労働基準監督署に寄せられた労働相談約110万5000件のうち、「いじめ・嫌がらせ」の相談は約7万2000件で過去最多。「加害者の多くは相手を傷つけている自覚がない。相手も自分と同じ考えや価値観を持っているはずという思い込みがハラスメントにつながる」

 男女や、上司と部下。認識の差を埋めるにはどうすればいいか。稲尾さんは「相手の背景や価値観の違いを知り、どうすれば同じ目標に向かってより良い仕事ができるか、一緒に語る場が必要」と対話の大切さを説いた。昨年、前財務次官の女性記者に対するセクハラ問題を巡っては、麻生太郎財務相の「男の記者に替えればいい」という発言も報道された。稲尾さんは「同じ属性や価値観の人同士で固まり、相手を排除しては、問題を助長しかねない」と警鐘を鳴らした。

なぎの深ほり

 互いの価値観の違いを理解することで解決できるハラスメントもある。座談会でのさまざまな意見を聞き、そう前向きに感じられました。平成生まれの私たちが、いつか新元号の世代とのコミュニケーションで悩む日が来るまで、心に留めておきたいと思います。 (竹内なぎ)

 

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