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設備、運用 見直し必要 北陸新幹線基地浸水 再発防止へ

専門家ら指摘 退避手順 検証を

 台風19号のため千曲川の堤防が決壊し、長野新幹線車両センター(長野市)が浸水した問題で、所有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)と、使用するJR東日本は、一帯が浸水想定区域に指定されているのに有効な対策を取らず、北陸新幹線の車両が浸水する事態となった。一帯は今後も豪雨で浸水する可能性がある。専門家は早急な対策の必要性を指摘する。(村松秀規、阿部竹虎)

台風19号による大雨の影響で浸水したJR東日本の長野新幹線車両センターに並ぶ北陸新幹線の車両=13日、長野市で

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 千曲川は過去に何度も氾濫してきた。それを記録した木製の水位標が、車両センター近くにある。洪水で水没した地点が刻まれ、発生年月日が書かれている。最も深く水没したのは一七四二(寛保二)年の大洪水「戌(いぬ)の満水」。辺りは五メートル近く水没した。

 「氾濫が頻繁にあったことは知っていた」。鉄道機構の担当者は明かす。機構は一九九一年のセンター建設開始時、過去の水害を基に、センターの土地を二メートルかさ上げして浸水対策工事をした。しかし、国土交通省は二〇一六年、一帯が最大の豪雨で十メートル以上浸水する「浸水想定区域」に指定し、機構の当初の想定を上回る浸水被害があると認定した。

 機構もJR東もこの事実を把握していたが、多大な予算がかかるとして浸水対策をしなかった。しかも、JR東は浸水被害を避けるための対応マニュアルを作成していないなど、迅速に対応できる体制になかった。台風19号では車両をセンターから退避させるなど、必要な措置を取らなかった。JR東の照井英之広報部長は「水害の恐れがある時の対応をルール化するなど改善を図っていく」と話す。

 機構とJR東を所管する国交省鉄道局施設課の深田遵(まもり)企画調整官は「車両を退避させる対応は過去にも取ったことがあり、今回もやろうと思えばできた。われわれも含め反省し、検証が必要」と本紙の取材に答えた。

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 台風19号では北陸新幹線全車両の三分の一に当たる十編成(百二十両)が浸水し、使えなくなった。約二週間にわたって金沢−東京間は不通となり、十万人以上に影響が出るとみられる。

 工学院大(東京都新宿区)の高木亮教授(電気鉄道システム)は「施設整備を充実させつつ、運用面での改善を積み上げるのが大切」と語る。施設整備では浸水を防ぐ堤防を設けることや、車両の浸水被害を最小限に抑えるために、排水機能を充実させることなどを挙げた。

 運用面では、豪雨時に車両センターから車両を退避させる場合の手順などを明確に決める必要があると指摘。それでも車両が浸水するケースがあると想定し「(他の新幹線の流用など)車両が浸水した場合の対策も考える必要がある」とした。

「予約回復 台風前に遠く」 「北陸の観光地 行楽の秋打撃」

 台風19号で長野新幹線車両センター周辺が浸水した影響で、金沢と東京を結ぶ北陸新幹線が十三日から一部区間で運休となり、秋の行楽期を迎えている石川、富山両県の宿泊施設には観光客からのキャンセルが相次いだ。二十五日から通常の九割程度の本数で直通運行を再開すると発表された十八日以降、キャンセルは減ってきているが、予約は台風前の水準に戻っていない。

 富山県黒部市の宇奈月温泉では十八日までに、旅館協同組合に加盟する十館で三千百件のキャンセルがあった。浜田政利理事長は「これほどキャンセルがあったのは初めて」と話す。黒部峡谷は毎年、十月下旬から紅葉のピークを迎えるが、台風前の水準にはほど遠い。

 石川県七尾市の和倉温泉では、北陸新幹線が計画運休となった十二日から十四日までの三日間で、旅館協同組合加盟の二十一施設に計二千五百四十一件のキャンセルが出た。十一月に入っていた八百人ほどの団体客の予約も取りやめになったという。

 金沢彩(さい)の庭ホテル(金沢市)によると、台風が接近した十日から十八日にかけて、約二百室、五百〜六百万円に相当するキャンセルがあった。十八日以降、キャンセルは一日数件程度にとどまっている。

 同県加賀市山中温泉の旅館「お花見九兵衛」の吉本龍平(りょうへい)社長(38)は「十月の売り上げは前年同月比85%ほどになりそう」と表情を曇らせる。市内の七宿泊施設の関係者は二十一日、会合を開催。新幹線の運転再開が発表された後も「予約を取り消した団体が戻ってくる動きはない」という報告があった。

【メモ】新幹線車両基地=車両検査や修繕、車内の清掃のほか、一時的な車両の待機場所として使われる。北陸新幹線の主要基地は長野新幹線車両センターのほかに東京新幹線車両センター(東京都北区)と白山総合車両所(石川県白山市)がある。北陸新幹線はJR東日本と西日本が共同運行し、3基地に分散して車両を待機させている。

 

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