トップ > 北陸中日新聞から > 北陸発 > 記事

ここから本文

北陸発

亡き夫との屋台 守る 中能登・焼き鳥「竹若」

夫亡き後、家族の助けを借りながら焼き鳥を売り続ける鳥畑幸子さん(中)=石川県中能登町井田の道の駅「織姫の里なかのと」で

写真

妻、悲しみ越えて再開

 石川県中能登町で焼き鳥屋台「竹若」を営んできた鳥畑(とりばたけ)弘さんが三月末、急逝した。かつては焼き肉店舗を構え、近年は屋台に変わったが、竹若の名は五十年以上、多くの人に親しまれてきた。悲しみを乗り越え、営業を再開させた妻幸子さん(70)は「体が動く限り、お父さん(夫)の店を守りたい」と話す。(中川紘希)

 竹若は一九六六(昭和四十一)年、中能登町一青(ひとと)で、鳥畑さん夫婦が開業。二〇〇八年、弘さんが脳梗塞で倒れて一時休業すると客足は戻らず、土、日曜に地元の道の駅「織姫(おりひめ)の里なかのと」や町内のイベント会場などで屋台を出す形に移行した。

一緒に記念撮影する生前の鳥畑弘さん(左)と幸子さん=同町一青で(幸子さん提供)

写真

 幸子さんは弘さんの亡き後、道の駅の駐車場で笑顔を振りまき、一本百円の国産むね肉を焼いて売る。客が列をつくり、応対に追われると、ふと夫のことを思い出す。「お父さんが、おればなあ」と。

 突然の別れだった。三月二十八日の弘さんの誕生日を祝おうと、その前日、好物のおろしもちを出した。だが、弘さんはもちをのどにつまらせ、病院に搬送された。泣きながら回復を祈る妻のそばで、夫は息を引き取った。七十六歳だった。

 落ち込んだ幸子さんは直後、屋台を出す気になれなかった。近くに住む娘夫婦や孫の励ましを受け、「家に閉じこもっていても仕方ない」と気持ちを切り替え、翌週には店に立った。

 不安もあった。「夫が亡くなって日が浅く、焼き鳥も売れないのでは」。だがなじみの客は焼き鳥を買い求め、励ましの言葉をくれた。幸子さんが顔を知らない人も声を掛けてくれた。夫を亡くし、これまで以上に夫の人望の厚さに気づかされた。

 生前、弘さんは左半身のまひがありながら、焼き肉店舗での営業再開を夢見ていた。幸子さんは今、焼き鳥の仕入れや売れた本数を遺影に向かって語り掛けている。「竹若には私たち夫婦の思い出が詰まっている。焼き鳥だけでも、名前を残したい」という。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索