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卒園にがおえ 35年ありがとう 金沢・妙源寺幼稚園 源昌子園長 筆置く

平成最後の春、卒園児への似顔絵贈呈を終える源昌子さん(中)=15日、金沢市光が丘の妙源寺幼稚園で(泉竜太郎撮影)

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計2792枚 平成最後「節目かな」

 光が映る瞳も、ピンクのほっぺたも「ずっと忘れたくない」。だから、自ら描いて心に刻んできた。金沢市光が丘の妙源寺幼稚園の園長源(みなもと)昌子さん(81)は三十五年にわたり、一年も休まず、卒園児に似顔絵を贈り続けている。思い出は尽きないが、傘寿を過ぎ、年齢を感じる。「いい節目かな」。平成最後の春、筆を置くと決めた。十六日は卒園式。笑顔の似顔絵を手にした六十九人が巣立つ。

 一人ずつ、目の前にちょこんと座らせる。「行儀よく、ニコニコとこっちを見てる」。その姿がたまらなくかわいくて、描く手を止め、頭をなでる。思わず抱き締めることも。下書きは鉛筆、仕上げは水彩絵の具。まつげの長さも妥協しない。「そっくりや、って言葉がうれしくて」。その子が親になり、連れてきた子をまた描く。親子二代の作品を含め、通算二千七百九十二枚をプレゼントした。

 A4版の画用紙。毎年十月に下書きを始める。何度も書き直し、年明けに色を落とす。思うように筆が進まない日も。カレンダーをめくるたび、焦る。「プレッシャーやね。似顔絵で頭がいっぱいになる」

 集中して筆を握った後はどっと疲れが襲う。腰痛に悩んだ時期もある。「今年で最後」。そう覚悟した春は数え切れない。何とか乗り越えてきたけれど、今回の六十九枚を描き上げたのは、卒園式の三日前。ぎりぎりだった。「これで一区切りにしようと思った」

 式の前日。遊戯室の壁に大好きな六十九人の似顔絵が飾られた。「どの子も似てるな、と思う。半年もかけて仕上げたから。これを三十五年もやってきたんやね」。深い安堵(あんど)と充実感、そして少し寂しい表情で言った。

  (前口憲幸)

 

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