トップ > 北陸中日新聞から > ホープフル > 記事

ここから本文

hopeful

【楽しむ】研ぎ 奥深き世界 切れ味 日々追求

写真

 「研ぎに没頭していると無心になれる」。富山市文京町、稲村修さん(61)の趣味は包丁研ぎ。水を垂らした砥石(といし)の上で包丁を滑らせると、シャッ、シャッとリズミカルな音が響く。刃の下部にできた幅一、二ミリの銀色の筋を目を細めて確認する。「これで切れる」。大きくうなずいた。

包丁100本 砥石50種類

 富山県入善町出身。「父方のおじ、母方のおじはともに釣り好き。連れられて海、川に行きました。釣った魚は食べるのがマナー。さばき方も覚えました」

 魚をさばくために良く切れる包丁、ナイフを単に研いでいた。実利が趣味に昇華したのは十年ほど前。「大学教員の妻が忙しくなり、主夫を引き受けました。三徳、柳刃、出刃。いろんな包丁でいろんな食材を切りましたが、満足がいくような切れ味にならない。どうすれば切れるようになるか、追求を始めました」

 包丁の種類、構造、素材、刃の形、砥石の種類、砥石への刃のあて方…。本やインターネットで情報を集め、実践した。現在、所有する包丁は百本以上。最も良く使う三徳包丁だけでも三十本はある。二十本ほどは未使用だ。砥石も荒砥、中砥、仕上げ砥、皮砥があれば十分すぎるが、天然、人工合わせて約五十種集めた。「日本ほど天然砥石に恵まれた国はない。だから和包丁が発達したという説もあります」

写真

確認はコピー用紙で

 三年ほど前から、インターネットの動画も見るようになると、自分の研ぎとは全く違った世界が広がっていた。「包丁の持ち方、動かし方が千差万別。まだまだだと感じ、改めて研ぎの奥深さに気付きました」

 切れ味の確認にトマトがよく使われるが、稲村さんは使用済みコピー用紙を使う。刃は紙の縁に斜めにあて、そっと引くだけで、すっと切れていく。

 現在の三代目魚津水族館がオープンした一九八一年四月に魚津市役所入庁。同館飼育技師となった。学芸員時代の二〇〇七年四月、五十歳を目前に北海道大大学院で学び初め、一二年に環境科学の博士号を取った。大学院生活と並行して、一一年に館長となり、今も再任用で館長を続ける。

 「引退して自由な時間が持てるようになったら、晴れの日は釣りざんまい、雨の日は包丁研ぎに集中しているでしょう。今は買えないというか、買わないようにしている最高級の包丁に手を出しているかもしれない」 (文・松本芳孝、写真・篠原麻希)

写真

松本記者もやってみました!

 単身赴任だが、自炊はしていない。包丁も持っていない。研ぎの話を聞いて、面白そうだと飛び付いたが、体験を前にテーマを誤ったかと少し後悔。でもやるしかない。

 体験場所は多忙な稲村さんの頼みで職場の魚津水族館。全然切れない館の出刃包丁を研ぐことになった。

 「片刃の和包丁の研ぎは簡単な方。刃の角度に合わせて右手で包丁を砥石の上に置き、左手を刃に添えて、前後に動かすだけ」。稲村さんが見本を見せてくれた。おっかなびっくり、包丁をつかみ、見よう見まねで研ぎ始める。

 「左手に力が入りすぎ。砥石に押しつけている。角度を決めるのは右手。左手は脱力して」。稲村さんから駄目出しがあった、と思った瞬間、包丁が砥石に引っ掛かって止まり、左手が刃の前に。ヒヤッとした。

 脱力は学生時代、コントラバスを弾いていた際には出来ていたはず。そう思い返して再挑戦。砥石の上に黒い粉末が出てきた。研げている証拠だ。コピー用紙で切れ味を確認。稲村さんが研いだ包丁ほどではないが、いちおう刃が紙に通っていく。ちょっぴり快感。今度はお気に入りのナイフで試してみよう。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索