トップ > 北陸中日新聞から > ホープフル > 記事

ここから本文

hopeful

【楽しむ】まきストーブの暮らし 炎ゆらり 熱じわり

写真

 若い頃のあこがれを中高年になってから実現する人も多い。金沢市立中学校で理科教諭を務める坂本雅(ただし)さん(54)=金沢市鈴見台=が形にしたのは、鉄製のまきストーブのある暮らし。自宅リビングでぜいたくな時間を過ごしている。ガラス窓にゆらめく炎、まきの燃える熱はじわりと広がり、やさしく体を温めてくれる。

 おがくずにマッチで着けた火は、細く割ったたき付けから少しずつ太いナラのまきへと燃え移り、ストーブ内に広がった。

 赤々と燃えるまきから浮き上がった青緑の炎がゆらめき出せば、まきに加え、ガスを燃やす二次燃焼装置が働き始めた証拠。ストーブの表面温度が二五〇度まで上がると、煙突から出る排気も完全燃焼し、ほとんど臭いがなくなる。ここまで十五分ほど、吸気口を絞り火を落ち着かせればストーブは巡航運転に入る。ソファに腰掛け、ほのかに眠気を感じながら、坂本さんの話を聞いた。

写真

英国赴任きっかけ

 きっかけは二〇〇四年のロンドン日本人学校への赴任だった。休暇に英国内を旅行して回ると、郊外のれんが造りの宿には必ず暖炉があった。炎を眺めゆったりと過ごす時間に心地よさを感じた。〇七年に帰国し、一〇年に金沢市内に自宅を新築した際は、迷わず外壁はれんがに、リビングにはまきストーブを設けた。「これだけで家中が暖まるし、結露もしない。何より火を見ているだけで落ち着くね」

 父親の影響で幼いころから野山でキャンプや釣りをした。中学からは山岳部に入り、テントを担いで白山や北アルプスを登った。キャンプの夜はたき火でイワナを焼き、炎を眺めて過ごした。「自然の中での体験が原点にあるのかもしれない」と振り返る。

 ストーブ用のまきは広葉樹を二、三年乾燥させたもので、購入すれば一トンで三〜六万円程度。ひと冬で三〜四トンほどを消費する。ただ坂本さんは「お金を使ったことはほとんどない」という。どのようにまきを入手しているのか?

間伐を手伝い入手

 まず、荒れた里山などの間伐作業を手伝い、切った原木を分ける「白山しらみね薪(まき)の会」や「能登薪人(まきびと)の会」への参加。知人から頼まれ伐採したり、造園業者からもらえることもある。「公園などの伐採作業を見かけると、声を掛けて分けてもらうこともあるね」と、車にチェーンソーを積んでいることも多いという。

 地球温暖化が懸念される中、化石燃料に依存しすぎることには抵抗があるそうだ。小さなことだが、環境にも貢献できればと考える。放置されて荒れた里山を見ると心が痛むといい、「例えば金沢では、今は研究段階で実現していないが、竹を燃料にできれば里山の荒廃を少しでも止められるのでは」。そう語る目は、小さな使命感に燃えていた。 (児玉太郎、写真も)

写真

児玉記者もやってみました!

 まき作りの苦労を知るため「白山しらみね薪(まき)の会」に参加した。会は白山麓地域の間伐材利活用を目的に、2013年に設立された。まきストーブ利用者らが月1回ほど、伐採やまき割りをする。まきは乾燥させ販売するほか、一部を参加者が持ち帰る仕組みだ。

 晴れ渡るある週末、石川県白山市白峰の作業場には7、8人の会員が集まった。私も、まき割り機での作業。間伐した原木をチェーンソーで40センチの長さに玉切りしたものを、エンジン油圧式の機械で割っていく。玉切りしたナラは、乾燥していないため重さ15キロ前後。腰の高さまで持ち上げて台の上に運ぶのはかなりの重労働だ。

 木の節があると割りきれず両手で裂くこともあり、腕の力も使う。15分もすれば汗がにじみ、上半身は悲鳴を上げた。太さ10センチほどに割ったまきは棚に積み乾燥させる。7、8本抱えると重さ10キロほど、運ぶのも一苦労だ。休憩時間に出されたお茶のなんとおいしいことか。

 たった3時間の作業でぐったり。翌日は肩から背中に掛けてしっかり筋肉が張り、痛みが残った。

 今回は機械を使ったが、坂本さんはおのでまき割りをする。さらなる重労働だが、「まき割りで汗をかいて、燃やせば部屋も暖まる。一石二鳥だね」と豪快に笑った。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索