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画中日記

能登へ 6 空港に先立ちエッセー誌

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 ×某月某日

 「酒」や「旅」が根っから大好きな作家や編集者が集まって、一九九二年東京春秋編集委員会というのを立ち上げエッセー誌『東京春秋』(東京企画/CM総合研究所)が創刊された。その作家陣の協力メンバーのお一人が、能登七尾出身の作家、杉森久英さんだった。

 代表的な作品に六二(昭和三十七)年上期直木賞を受賞された『天才と狂人の間』(河出書房新社)や自伝小説『能登』(集英社)がある。九七年に亡くなられた後、ご遺族によって膨大な量の蔵書や直筆原稿が、七尾市に寄贈され「杉森久英記念文庫」が設立された。

 二〇〇三年七月に「能登空港」が開設され、東京との距離がぐっと縮まるのを機に、杉森さんの故郷でもある能登を盛り上げようと編集委員会の中から「東京春秋」の姉妹誌を発行しようという声が持ち上がり、開港に先立ってエッセー誌『能登春秋』の方が一足先に発行された。

 執筆陣は、実に多彩だった。

 作家の吉村昭さんは、文芸誌『群像』に発表した能登への旅の印象をまとめた「霰ふる」が、どのように作品として昇華していったかを自ら明かされて興味深く、「週刊読書人」編集長の真下俊夫さんは、一癖斉こと杉森さんの思い出をユーモアを込めて書かれている。

 また、作家早乙女貢さんは「能登の思い出」というタイトルでエッセーをお書きになっているが、ここに出てくる画家岡本太郎とのやりとりが何とも可笑(おか)しくつい笑ってしまう。その他にも、郷里の七尾市出身の作家戸部新十郎さんが先輩作家杉森さんとの思い出を乾いた筆致で描かれていて巧みだ。

 文芸評論家の山本容朗さんや、第五十四代横綱輪島大士さんも登場されている。私もエッセー一本と表紙絵で参加させていただいたが、今でも、あれは能登に吹いた一陣の風だったと思っている。

 

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