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北陸経済ニュース

地域資源 生かし、守る 耕作放棄地で酒米作り

(上)SDGsの達成に向けて地域課題の解決に取り組む数馬酒造の数馬嘉一郎さん(下)廃園となった保育所を活用してしょうゆの仕込みをする社員ら(数馬酒造提供)=いずれも石川県能登町で

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数馬酒造(石川県能登町)

 お米をお酒にして皆さんに届ける。本当にそれだけでいいのか−。数馬酒造(石川県能登町)の五代目蔵元、数馬嘉一郎さん(32)は二十四歳で家業を継いだ後、能登の酒蔵の跡取りとして生まれた意味を真剣に考えた。「酒を飲んでもらうことがゴールではなく、その先で何に貢献できるか」。まず出した答えは耕作放棄地の解消だった。

 数馬さんは二〇一四年から高校の同級生だった同県志賀町の農家と連携し、能登各地の耕作放棄地を活用した酒米作りに取り組む。県内の大学生や取引先の百貨店などの活動に共感してくれる人たちを巻き込みながら拡大し、これまでに「東京ドーム五個分」の面積を復活させてきた。

 地域資源の循環も意識している。農家の米作りの過程で出るもみ殻を畜産業が堆肥に加工し、その堆肥で育った米で酒を造り、精米の過程で出る米粉を牛の餌にする。この三者連携の中で生まれた清酒「能登牛純米」は、味はもとより、その背景も消費者から高く評価されている。

最重点目標

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 能登では若者の流出と残された住民の高齢化が地域産業の衰退を招いている。こうした活動はSDGs(エスディージーズ)よりも先に「能登を守りたい」という思いの表れだった。二年ほど前に仲間の農家から教えられてSDGsを知り、今はその枠組みの中で活動を発信している。SDGsの分野別目標(15)「陸の豊かさも守ろう」など複数の目標に合致し、最重点目標には(11)「住み続けられるまちづくりを」を挙げる。

 今は事業分野を広げつつある。廃園した能登町内の保育所施設を借りて、しょうゆの仕込みを進めている。原材料は志賀町の耕作放棄地で作る小麦と大豆や、石川県珠洲市の揚げ浜式塩田で作られた塩。来年春ごろには第一弾が仕上がりそうだ。廃業した能登町内のワイナリーを借りてリキュール類の製造も拡大する。数馬さんは「地域資源の再価値化につながることは率先して取り組む」と語る。

 トップの思いを後押しするのは社員たち。昨年から酒造りでは長く当たり前だった泊まり込みの勤務を社員の発案で廃止した。「酒造りには若い人が入りにくかった。どうしたら持続可能なものづくりができるか、社員たち自身がやり方を考えてくれた」。会社も地域も幸せに−。SDGsを意識すれば成果は必ず出ると感じている。 (中平雄大)

 持続可能な開発目標(SDGs) 2015年9月の国連サミットで採択され、30年までの達成を目指す国際目標。「誰一人取り残さない」という理念のもと、貧困や飢餓の撲滅、環境保全、気候変動への対応、男女平等の実現など17の分野別目標と169の具体的達成基準を掲げる。SDGsはSustainable Development Goalsの略。

【会社メモ】 1869(明治2)年に創業。清酒としょうゆの製造販売を手掛ける。清酒の代表銘柄は「竹葉」。2005年に清酒の輸出事業を開始。14年には石川県内の大学生らが耕作放棄地の開墾から米作り、酒の仕込み、販売までの全過程に携わる「Nプロジェクト」を始動した。18年には経済産業省の「地域未来牽引(けんいん)企業」に選定された。従業員は14人。本社は石川県能登町宇出津。

 

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