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北陸文化

21美 特徴ある空間生かすには 入館者の動線 実験と分析

ビブスを着けた参加者(被験者役)を、リサーチャー(調査員)が調査する様子=1月18日、金沢21世紀美術館で(同館提供)

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 空間レイアウトの科学的な分析手法として注目されている「Space Syntax(スペース・シンタックス)」。その理論を展示で紹介し、実際に実験や映像解析で金沢21世紀美術館の空間の可能性を探る試みが、同館で展開されている。「デザインギャラリー」で行う実験的な展示シリーズ「lab.」の一環で、展示は六月十四日まで。(松岡等)

 スペース・シンタックスは、空間(スペース)と言語学の統語論(シンタックス)を組み合わせた言葉。一九七〇年代にロンドン大のビル・ヒアリー教授が、空間レイアウトの分析理論として提唱した。空間の構成と人が構造物を認知してどう行動するかの相関関係を解析し、図やグラフで可視化する。ロンドンのトラファルガー広場の再生などで活用された。

 21美は、建築家の妹島和世さん、西沢立衛さんのユニット「SANAA」が、「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトにした、円形というユニークな設計が最大の特徴だが、円の外周にある四カ所の入り口から無料ゾーンに入館でき、有料の展示室ゾーンは中心部に配置される。各ゾーンは間仕切りの開閉によって可変なため、さまざまな空間レイアウトの可能性を持っている。

 21美では、二つの実験が進行中だ。改装のために休館していた一月中の二日間、募った市民ボランティアら延べ百六十人が参加し、間仕切りを変えて五つのルートで実際に人がどう行動したかを調べた。分析した結果は今後、展示室で公開される。

スペース・シンタックスの空間指標による金沢21世紀美術館のレイアウト分析図(同館提供)

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 もう一つの実験は、無料の交流ゾーンの入館者の動向調査。カメラを設置し、人物が特定されないようプライバシーに配慮しながら、実際に入館者の動画を撮影。行き交う人が、どのような動線をたどり、どこで立ち止まったり、スツールに座ったりするかなどの行動を、データからパターンの特徴を読み取る「機械学習」などの解析方法で分析。リアルタイムの映像は展示室で見ることもできる。

 担当する中田耕市学芸員は「美術館は開館から十五年を経過したが、この特徴のある空間を生かし切れているかを、経験値だけではなく、科学的に分析して数値化、可視化できる。次の十五年に向けた利用方法を考える上で参考になる」と、実験の分析に期待する。

 スペース・シンタックスの手法は国内でも既にショッピングモールなど商業施設のレイアウト、兵庫県姫路市での駅前広場の空間構成や熊本市の中心市街地の空間診断など、街づくりにも活用されている。中田さんは「行政の担当者にも紹介し、美術館だけでなく街づくりにも生かせるのでは」とも話している。

 

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