トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

【宝生流シテ方 佐野玄宜の能楽談儀】(1) ものの功罪 今も昔も

能「西行桜」で西行の前に現れる桜の精=2015年3月、石川県立能楽堂で

写真

 早いもので北陸新幹線が開業してもうすぐ五周年になるそうです。私は東京と金沢を行ったり来たりの生活をしているので本当に助かっています。昨年台風による水害で運休したときは久しぶりに米原経由で移動し、北陸新幹線のありがたさを痛感しました。新幹線開業以降、メディアでも金沢が盛んに特集され、たくさんの観光客が訪れて下さっています。

 その一方で、飲食店はどこも混雑してお店を探すのも大変になり、馴染(なじ)みのお店にもなかなか行けなくなってしまいました。新しいホテルがどんどん建ち、街の景色が変わっていきます。何事も功罪ありますね。

 「西行桜」という能があります。歌人として有名な西行は桜を愛し、嵯峨野の奥で桜を眺めながら静かに暮らしていました。しかし、その桜の噂(うわさ)を聞きつけ人々が押し寄せます。仕方なく招き入れるものの、一人で静かに花を眺めたい西行は「花見んと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎(とが)にはありける」(花を見ようと人が集まって来てしまうのが桜の難点だ)と口ずさむと、「桜に咎ありとはひどい話です」と言って、桜の精が老人の姿で現れる、というお話。

 首相の「桜を見る会」が問題になっていますが、「桜に罪はない」と桜の木はぼやいているかもしれませんね。

 今月からこのコラムを担当させていただきます、能楽師の佐野玄宜と申します。能というと、自分には難しすぎる、高尚すぎると敬遠してらっしゃる方も多いかもしれません。コラムを読んで、少しでも能を身近に感じて、ちょっと能楽堂に行ってみようと思っていただけたらと思っておりますので、お付き合いの程よろしくお願いします。

◇二月定例能番組(2月5日午後1時から石川県立能楽堂)

 ▽能「箙(えびら)」(シテ松田若子、ワキ平木豊男)

 ▽連吟「西王母」(山本貢伸ほか)

 ▽狂言「福の神」(シテ野村祐丞)

 ▽能「西行桜」(シテ渡辺荀之助、ワキ殿田謙吉)

 ▽入場料=前売り一般2500円(当日3000円)、若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料(問)石川県立能楽堂=電076(264)2598

※タイトルは、世阿弥の話を聞き書きした「申楽(さるがく)談儀」になぞらえて。毎月第3土曜日に掲載。

写真

【プロフィール】さの・げんき=1981年東京都生まれ。早稲田大教育学部卒、同大学院文学研究科修士課程修了。宝生宗家、高橋章、父の佐野由於に師事。86年に4歳で初舞台。99年に祖父正治十三回忌追善能で初シテ「経政」。2014年「石橋」、15年「道成寺」、18年「乱 和合」を披(ひら)く。能楽協会会員、同門会「蔦玄会」を主宰。北陸、関東を中心に活動し、早大グローバルエデュケーションセンター非常勤講師なども務める。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索