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北陸文化

工芸をより広い視野で  国立工芸館の唐沢昌宏工芸課長に聞く

 今年夏に金沢市出羽町へ移転する東京国立近代美術館工芸館(国立工芸館)。唐沢昌宏工芸課長(55)は「国立の館として全国的な視野で活動する」という基本は変わらないことを強調しながら、「工芸の盛んな地元・石川との連携を考えていきたい」と語る。国立工芸館はどんな館になるのか。移転後は館長とも目されている唐沢さんに聞いた。 (松岡等)

若い作家の活動紹介 / 教育機関とも協力

 −移転に地元からの期待も大きい。

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 「石川県からの東京五輪・パラリンピックの前の開館という要望もあり、それに向けて準備を進めている。移るのは約四千点の所蔵品のうちデザインの分野を除いた三千点の中から選んだ千九百点。石川県からの伝統工芸を中心にという要望も踏まえ、重要無形文化財保持者(人間国宝)や芸術院会員らの作品ということになる。広く日本の工芸、世界の工芸を紹介できればと思う」

      ◇

 −国立工芸館としての役割は変わるのか。

 「それは全く変わらない。石川県が誘致したということがあるが、国立の館として全国を見渡し、中立性を保ちながら、日本や世界の工芸を紹介していく」

 「一方で、新たな建物には大きな企画展などをやる展示室のほかに、小さなスペースがあり、そこではこれまでなかなかできなかった若い作家の活動を紹介できないか考えている。大きさを変えて使える多目的室があり、ワークショップやイベントやコンサート的なことにも取り組みたい。工芸の盛んな石川ではいろんなことをやっている。国立といえど、石川県や金沢市と役割をすみ分けながら連携も大事にしたい」

 「近隣には金沢美術工芸大など教育機関がいくつかある。作り手としては物に触るというのは大事なこと。大学の先生たちとも協力し、学生さんに所蔵品に実際に触れてもらう機会をつくりたいという思いがある」

      ◇

 −期待の一方、作家の中には「作品は東京の国立美術館にあってこそだ」という人もいる。

 「石川県は工芸分野でレベルが高い土地。全国区の人も多いし、所蔵品にも石川をはじめ北陸の出身者の作品は多いが、工芸館では全国のそうしたレベルの人の作品を収蔵している。これまで石川、北陸で見ることができなかった作品が含まれているので、より工芸を広い視野で見てもらえる」

 「また、日本の工芸というのは幅が広く、戦後は広がりを持っている。中には『これが工芸なの?』という作品もたくさんあるので、そうしたものも展示、紹介することで、日本人、あるいは日本の工芸家が考えている工芸ってなんなのかなということを一緒に勉強できるのではないか。新しい視線、目線で見ていただけるはずだ」

 「石川の地元作家からすると、金沢に移転した工芸館だから置いてあると思われたくないのかもしれない。一方で、寄贈の話も少なからずあって、それはお断りをしている状況。こちらがほしいものは声をかけて購入したり、寄贈を受けたりしているが、作家の側からきた場合はお断りをしている。一人の作品をもらってしまうと歯止めがきかなくなる。もう一つ、近隣に県立伝統産業工芸館があって、産業としての工芸を紹介しているが、こちらは作家、表現を見せているので、すみ分けをしっかりしたい」

      ◇

 −オープンではどんな展示を。

 「それは所蔵作品だ。石川にこういう作品を持ってきましたよというのをしっかりお見せしたい。移転が決まって以降、県立美術館など各地でコレクション展をやってきたが、その中でもよりすぐりのものができる」

 「国立館の役割の一つは、所蔵品の貸し出しで、よく貸し出し中ということがあったが、移転を控えてそれがないので、展示室や収蔵庫ができたばかりで条件の整わない一部の漆器を除くといい物を見ていただけるのではないか」

 「日本伝統工芸展や日展など、東京からスタートする大きな団体展があると、これまでは全国から東京に来られた人たちが、その足で工芸館に来てくれていた。地方からも金沢へと足を運んでもらえる展示をやっていきたい」

【プロフィール】 からさわ・まさひろ 1964年、名古屋市生まれ。愛知県立芸術大大学院美術研究科修了。愛知県陶磁資料館学芸員を経て、2003年に東京国立近代美術館主任研究員、10年から工芸課長。日本陶磁協会賞選考委員。国際陶芸アカデミー会員。専門は近・現代工芸史。著書に「窯別ガイド日本のやきもの 瀬戸」(淡交社)など。

 

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