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北陸文化

【岩津航の南フランス日記】(8) クリスマス市 

 十二月といえば、もちろんクリスマスである。街路にはイルミネーションが輝き、スーパーの店頭でも小ぶりのツリーが売り出されるようになった。お盆の金沢でキリコが売られる風景にちょっと似ている。

 トゥールーズ中心部にあるキャピトル広場には、クリスマスまでの一カ月間、常設のクリスマス市(いち)が立つ。今年は百十五もの小屋が設置された。クリスマス市といえば、温めた赤ワインに香辛料を入れて飲むヴァン・ショーや、キリスト生誕の場面を模したフィギュアを飾るクレッシュの販売が定番だが、それ以外にも地元のソーセージや木製玩具など、クリスマスと特に関係のない店も少なくない。

さまざまな小屋が集まるクリスマス市=フランス・トゥールーズで

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 興味深いのは、アルザス料理の店が数軒あったことだ。アルザス地方と、隣接するドイツは、クリスマス市発祥の地である。それが世俗化し、ヨーロッパの都市部に広まったのは、二十世紀の終わり頃らしい。

 昨年のストラスブールのクリスマス市でのテロは、まだ記憶に新しい。十二月に入り、年金法改正反対のストライキとデモ行進が断続的に続いているが、キャピトル広場は厳重に警備され、デモは許可されていない。市内には、ほかにもクリスマス市があちらこちらに立っている。

商機に加熱する面も

 地元の人に聞くと、ここ数年でクリスマスをめぐる商業的なイベントが過熱しているとのこと。日曜日は伝統的に休息日だが、十二月だけ週末営業する店が増えた。一方で、過剰な消費を強要する社会への嫌悪感もしばしば耳にする。その観点からすれば、聖ニコラウスが子どもたちを救った故事にちなむクリスマスの贈り物は、今ではお金を使わせるための口実でしかない。

 先日、町外れの小さなクリスマス市を訪れてみた。警備員もいない、昔ながらの雰囲気の市をぶらつく。この地方で昔から使われているオック語の歌と演奏に合わせて、子どもたちがはにかみながら、手をつないで踊っている。せめて子どもたちには平和がありますように、と祈りたくなる年の瀬である。

     ◇

 岩津航(いわつこう)・金沢大教授(仏文学、比較文学)の南仏トゥールーズ滞在記。

 

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