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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】(37) 「国栖」壬申の乱 メルヘン風に

狂言方(左2人)も活躍する能「国栖」。シテは手前の老人=2000年9月3日、金沢市の石川県立能楽堂で

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 金沢能楽会の新年一月定例能は、恒例となった能「翁(おきな)」が上演される。九年連続で、書くネタもいささか枯渇。今回はもう一番の能「国栖(くず)」を取り上げることにしよう。

 国栖は奈良・吉野川沿いの寒村。ここで起きた壬申(じんしん)の乱(六七二年)の一場面を描く、神話のような能である。

 展開されるエピソードは三つ。大友(謡本では大伴)皇子軍に追われた浄御原(きよみがはら)(謡本では清見原)の天皇(天武天皇、子方)一行が年老いた漁師夫婦(前シテ、ツレ)の世話を受ける。天皇が食べ残したアユの塩焼きを老人が川へ放したところ、ピチピチと泳ぎ始めた、という吉兆が第一話。シテの動きがアユの躍動を表現する。

 次に、追手(間(あい)狂言)が来るというので老人が天皇を伏せた舟に隠す場面。気迫満点の問答で、弓ややりを持った兵たちを追い返す。狂言方が大活躍する。

 最後は、老人に化身していた蔵王権現(後シテ)が天女らとともに現れ、天武天皇を守護するフィナーレ。囃子(はやし)が、老夫妻の退場、天女の登場、天女の舞と続く三場面を、四つの旋律を延々と繰り返して演奏する不思議な演出もある。

 冒頭、天皇一行の登場でワキヅレが小さな屋根のような物をかざして出てくる。これは天皇が乗る輿(こし)の象徴。重厚な翁の後にメルヘンの世界を楽しむ。よい年の始めを。(笛)

◇一月定例能番組(1月5日午後1時から石川県立能楽堂)

 ▽能「翁」(シテ佐野由於、千歳佐野弘宜、三番叟炭光太郎)

 ▽狂言「蝸牛」(シテ炭哲男)

 ▽能「国栖」(シテ高橋憲正、姥福岡聡子、子方藪俊太朗、天女松田若子、アイ能村祐丞、山田譲二)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料、(問)石川県立能楽堂=電076(264)2598

 ※「能楽おもしろ鑑賞法」は今回で終わり。来月から毎月第三週土曜日に、シテ方宝生流の佐野玄宜さんのエッセーを掲載します。

 

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