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北陸文化

ブザンソンコンクール優勝 沖澤のどかさん凱旋

指揮者というより 音楽家と呼ばれたい

 小澤征爾さん、佐渡裕さんら日本を代表する指揮者を輩出したフランス・ブザンソン国際若手指揮者コンクールで優勝した沖澤のどかさん(32)=青森県出身。二〇一一年秋から一年半、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の指揮研究員として学び、「金沢は第二の故郷。OEKでの経験は大きな財産」と語る。七日の小松定期公演でも聴衆を魅了した。ベルリンを拠点に飛躍する沖澤さんに聞いた。(聞き手・松岡等)

OEKとのリハーサルで笑顔も見せる沖澤のどかさん=6日、金沢市の石川県文教会館で

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 −昨年の東京国際音楽コンクール一位に続く優勝は快挙です。

 「もちろん、うれしかったのですが、その後の反響の大きさで、何か大きなことをやったんだなということを実感しました。受賞後はドイツやフランスのオーケストラから声がかかっています」

 −なぜ指揮を。

 「伯父がチェロを弾いていて、その影響で高校までチェロを続け、オーボエも吹いてました。姉もチェロの演奏家です。本当は大学でオーボエを続けたかったのですが、親に楽器を買ってほしいと言い出せなくて。高校入学時に音楽系ではない大学を受けると言っていたので、いまさら言えないな、というのもあった。ただ、国公立ならどこでもいいよ、と言ってくれていたので、なら東京芸大で、指揮科ならいけるんじゃないかと」

 −最初は苦労したそうですね。

 「甘かったです。間違って受かっちゃったみたいなものだったので覚悟もなかった。先生はかなり厳しく、言われていることが理解できずに何をやっていいのか分からなかった。体調も崩して、大学を受け直すつもりで、半年間青森に帰ってました」

 −音楽に戻ったのは。

 「学外でセミナーを受けていた下野竜也先生(現広島交響楽団音楽総監督)が背中を押してくれたのが大きかった。唯一、『才能がある』と。芸大をやめるつもりで電話したら、『もうちょっと頑張ってみないか、芸大なら指揮だけでなく、いろんな楽器の友達もできるから』と言ってくれて」

 「大学はだましだましでしたが、四年生の時に当時OEKの音楽監督だった井上道義先生の指揮者のためのマスタークラスというのがあり、『モーツァルトの音がする』と評価をいただいた。すぐに指揮研究員としてこないかと誘ってもらい、それから年半は東京から通いで、そのあと大学院は休学して一年間、金沢で暮らしました」

 −OEKではいろいろな仕事をしたそうですね。

OEK小松定期公演で拍手に応える沖澤のどかさん(中)=7日、石川県小松市のこまつ芸術劇場うららで

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 「事務の仕事もしましたし、オペラ副指揮者、(舞台に合図を出す)プロンプター、鍵盤楽器を弾いたりもしました。オーケストラという組織やコンサートが、どういう人によって成り立っていて、音楽家が音楽に集中できるようどれだけの人がサポートしているのかを、若い時に学べたのは大きかった。だから指揮が変わるとは思わないけど、大きな財産になりました」

 「金沢は快適でしたね。青森から東京に出て具合が悪くなった原因の一つには大都市のストレスもあった。街にも音があふれすぎて、演奏会に行く気にならなかった。金沢ではふらっと散歩に出かけたくなるし、コンサートが終わった後は静かだし、音楽を聴く環境が整ってた」

 「元々、欧州に行きたくて、ドイツ語を勉強していましたが、OEKは国際的なオケで、リハーサルが英語だったりしたのも勉強になりました」

「金沢は第二の故郷」

 −OEKの小松定期公演が凱旋(がいせん)コンサートになりました。

 「それが、うれしかった。金沢は第二の故郷だと思ってますし、自分の中にあるオケの音はOEKにかなり影響されてます。楽譜を読む時もOEKの音が入っている。帰ってこれるというのはありがたいです」

 「指揮者コンクールは、キャリアを始めるのには必要でも、音楽家として必要というわけではない。OEKは小さい編成で、必ずしも指揮者が必要というわけではないので、指揮という仕事について謙虚になる機会になります」

 「OEKは奏者が個性的で、音は室内楽的。指揮者が強く引っ張るというより、緻密なアンサンブルと、自主性が特徴です。ここで指揮することは、大きなオケを振る時にもとても役に立つ。レパートリーの面でも、小さな編成で魅力的な曲は実際はたくさんあって、それを演奏できるというのもとてもうれしい」

 −どんな指揮者を目指しますか。

 「指揮者と言われるよりは音楽家と言われるようになりたいですね。指揮は方法にすぎないと思っていて、指揮を始めたきっかけも、いまだにその道でやっているのも偶然。やっぱり音楽をする方法の一つでしかないと思っていて。今も楽器は弾くし、歌も歌います。指揮は職業としてやっているだけというか。昔は指揮者もオケの真ん中でチェンバロを弾いていたわけです。そういうイメージかな」

 −女性指揮者が増えてきました。

 「昔に比べ多いけど、まだ少ない。音楽に性別は関係ないし、自分自身は意識はしないですが。ただ、欧州、アメリカでこの何年か、女性の指揮者を必要以上にプッシュする動きがあり、それには疑問を感じます。女性指揮者のためのコンクールもありますが、(偏見への)正しい解決策にはならないと思う」

 「難しいのは、人権意識の高い欧州では口には決して出さなくても、あのオケは女性は使わないとか、あの音楽監督は女性を好まない、といった話は耳に入るので、無視はできない。ただ、私にそこで戦う余力はなく、結局、音楽で説得するしかないと思っています。欧州では、性別より、アジア人として意識させられる場面のほうが多いですね」

 「日本にも帰りますが、今後はベルリンで研さんを積むつもりです。来年三月の石川県内の学生とOEKの合同オケによるカレッジコンサートで、ショスタコービッチの交響曲第五番を演奏します。学生オケは楽しい。青春!という感じで、大好きです」

【メモ】おきさわ・のどか=1987年、青森県生まれ。東京芸術大指揮科を経て同大学院修士課程修了。2011〜12年、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)指揮研究員。18年の第18回東京国際音楽コンクール<指揮>で第1位および特別賞、斎藤秀雄賞。第7回ルーマニア国際指揮者コンクール3位。ハンス・アイスラー音楽大ベルリンで学び、今年9月の第56回ブザンソン国際若手指揮者コンクールで優勝、観客賞、オーケストラ賞を総なめにした。来年5月の「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」の出演も調整中。

※【お断り】30日の北陸文化面は休みます。

 

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