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北陸文化

【岩津航の南フランス日記】(7) 諸聖人の日

 フランスの学校には秋休みがある。カトリックの「諸聖人の日(万聖節)」である十一月一日は祝日となり、その前後に小学校は二週間、大学でも一週間ほどの休暇がある。翌日が「亡き信者の日」であるため、諸聖人の日は伝統的に先祖の墓参りの日となっている。いわばフランス流のお彼岸であり、実際、帰省する人も多い。哲学者のアランは、十一月十一日が第一次大戦の休戦記念日にあたることを念頭に、秋はもともと死者に思いをはせる時期だったのが、フランス国民全体が喪に服す季節になった、と指摘している。ちなみに、ハロウィーンの語源は「諸聖人の日の前日」であり、幽霊仮装は死者のお祭りの反映である。

コロンベット通りのお祭り=フランス・トゥールーズで

写真

“お彼岸”の出店 活気

 トゥールーズのコロンベット通りでは、毎年この諸聖人の日に合わせて出店が立ち並ぶ。もともとは、墓地への抜け道となっている通りを活気づけようと、終戦直後の七十五年前に始まった催しで、今ではトゥールーズの秋の風物詩となっている。今年はあいにくの雨模様だったが、訪ねてみた。食品だけでなく、空き瓶をリユーズした照明器具など、エコロジーを意識した工芸品が販売されているのは、いかにも今どきだ。また、日本やブルガリアの輸入食材店をはじめ、多国籍の味に触れることができるのも、この通りの魅力である。

 近くのサン・トーバン教会周辺には、毎週日曜日に市が立つ。名物は生きた鶏の販売だ。八百屋で隣り合わせた人が、ふと見ると脚を握っていて、逆さづりの鶏が目をぱちくりさせていることがある。まるで田舎の村に来たような雰囲気である。

 コロンベット地区は、パリのモンマルトルに倣って「自由区」を宣言し、独自の区長や監視員まで選出している。もちろん正式な行政組織ではなく、民間団体にすぎないのだが、コロンベット通りやサン・トーバンの市に息づく、昔ながらの民衆的な交流の表現と捉えることができるだろう。ここでは、トゥールーズの過去と現代が楽しげに共存しているのである。

     ◇

 岩津航(いわつこう)・金沢大教授(仏文学、比較文学)の南仏トゥールーズ滞在記。

 

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