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北陸文化

【展覧会】 詩人と画家生涯の交流 富山県美術館   

滝口修造と加納光於さん 30歳差超え創造の刺激

加納光於《稲妻捕り》ElementsNo.11(1977年、作家蔵、縦62センチ、横50センチ)

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 富山市出身の詩人、美術評論家の滝口修造(一九〇三〜七九年)と独創的な版画技術で国際的な評価を受けた美術家・加納光於(みつお)さん(86)。その作品と交流を示す資料を集めた大規模な展覧会「瀧口修造/加納光於《海燕のセミオティク》2019 詩人と画家の 出会い 交流 創造」が、富山県美術館(富山市)で開かれている。三十歳という年の差を超え、出会いから生涯続いた創造的な影響の深さを知ることができる。 (松岡等)

 加納さんが滝口と出会うのは一九五三年、二十歳の時だった。独自に始めた銅版画に滝口が関心を持ち、加納さんが献呈した私家版の銅版画集「植物」を滝口は高く評価。五六年には当時、無条件で人選を引き受けていたタケミヤ画廊(東京)で加納さんの個展を開く。

 戦前、戦後にかけて日本の前衛美術の中心にあった滝口は、五八年にベネチア・ビエンナーレの日本代表、審査員として初めて渡欧し、ダリ、デュシャン、ブルトンらと出会い、翌年、こうした人たちに贈ったクリスマスカードの制作を加納さんに依頼した。その時に添えた短詩にある「骨ノ鏡」という詩句は、滝口が最晩年に書いた詩句にも再び現れる。

滝口修造《私の心臓は時を刻む》100点の内1点(1962年、富山県美術館蔵、額寸縦20センチ、横15センチ)

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 展示では、加納さんの最初期から近年の代表作までを一挙に紹介するほか、滝口が加納さんと出会って以降に没頭したデカルコマニー(紙などに絵の具を垂らし、乾かないうちに別の紙を押しつけることで意図しない偶発的な模様ができる技法)の連作「私の心臓は時を刻む」の全百点、二人が共作した詩画集「稲妻捕り Elements」「掌中(しょうちゅう)破片」や互いの書簡など約二百五十点を紹介する。

 滝口の死後、八〇年代から加納さんは油彩に取り組み、画材に蜜蝋(みつろう)などを混ぜて鮮やかな色彩とともに独特の「揺らぎ」を生む独特の作風で制作を続けている。展覧会のタイトルにある作品「海燕のセミオティク」(二〇一八年)の「セミオティク」とは「記号論」の意味。空を切る俊敏なツバメの動きを思わせる表現の連作は、絵画と言葉との関係を改めて考えさせる。

自作について語る加納光於さん(左)=2日、富山市の富山県美術館で

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 加納さんは二日にあった滝口研究家でもある詩人の岩崎美弥子さんと対談の中で「絵画は『見る/見られる』もの。自分の中に入り込もうとする言葉を排除し特に文学的な言葉って取り込むまいと思っている一方、降ってくる言葉ってのを願っているところがある。降臨という言葉があるが、言葉が一言でもあると自分の仕事がうまくいく。瞬間に現れては消え、消えては現れる、誰のものでもあり、誰のものでもないというのが色彩の本質ではないか」と語った。会期は十二月二十五日まで。水曜日休館。

  ◇     ◇     ◇

 関連イベントで、十二月七日午後二時から詩人・林浩平さんの講演会、同月十五日午後二時から美術家・山口啓介さんの講演会がある。(問)富山県美術館076(431)2711

 

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