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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】(36) 能「芭蕉」 破れ草木にも仏の慈悲

仏縁を得た喜びを舞う芭蕉の精。渋い色彩の装束が美しい=2015年11月8日、東京・宝生能楽堂で(宝生会提供)

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 金沢能楽会の十二月定例能は、上演時間が二時間になろうという大曲「芭蕉」が組まれた。奥伝の位置づけであり、言葉の省略が目立つ詞章は難解。それでもテーマは明確なので、雰囲気を手掛かりに味わってみよう。

 舞台は中国楚国の山中(中国らしい演出はない)。日夜法華経を読む僧(ワキ)の庵(いおり)を、寂しげな女(前シテ)が訪れる。夜ごとに経を聞いていたと言い「私のような女や草木までも(成仏できるとは=謡では省略)頼もしく思います」と打ち明けた。

 法華経の教えを深く理解していることに驚く僧。姿を消した女は、僧の読経で芭蕉の精(後シテ)となって再び現れ、仏縁を結んだ喜びの舞をしっとりと舞うのだった。

 草木にも仏の救いが及ぶことを描くが、芭蕉は秋になると大きな葉がぼろぼろに裂けてしまう植物。虚子が「横に破(や)れ終(つい)には縦に破れ芭蕉」と詠むぐらい哀れな存在だ。

 そんな芭蕉に喜びを語らせる能。宗教的な静けさでゆったりと展開。舞の後、突風が吹いて境内の花々が散り、「芭蕉は破れて残りけり」で幕となる。余韻の中に、無残なありさまの芭蕉にも仏の慈悲が及んでいる、との世界観が隠される。作者は言葉で説明はしない。心を研ぎ澄まそう。

 余談だが、能の半ばで所の者(間(あい)狂言)が披歴するさまざまな芭蕉のエピソードは、作品理解に欠かせない。しっかり聞きたい。(笛)

◇十二月定例能番組(12月1日午後1時から石川県立能楽堂)

 ▽能「芭蕉」(シテ佐野由於)

 ▽仕舞「通小町」(シテ高橋右任)

 ▽狂言「鐘の音」(シテ炭光太郎)

 ▽能「飛雲」(シテ佐野弘宜)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)、若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料(問)石川県立能楽堂076(264)2598

 

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