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北陸文化

【美術】金沢21美 開館15周年 「現在地−未来の地図を描くために」

世界の「今」へ問題意識

 美術館のコレクション展と言えば、過去の収蔵作品を網羅的に紹介するのが一般的。しかし金沢21世紀美術館が開館十五周年を記念して開催中の「現在地−未来の地図を描くために」は、収蔵品から見える新たな意味をキーワードとして抽出し、世界の「今」をアートの視点で問い直す試みだ。新たな作品も加え、美術館の次へのステップに向けた意欲も感じさせる。 (敬称略、松岡等)

 21美の開館は二〇〇四年十月。一九八〇年代以降の同時代の作品を中心に約四千点を集めてきた。これらの作品から抽出した「エコロジー、ローカリティー」「関係性についての考察」「身体」「(ディス)コミュニケーション」「KOGEI」など二十四のテーマに沿って作品を展示する。

エルネスト・ネト《身体・宇宙船・精神》(2004年)

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オラファー・エリアソン《水の彩るあなたの水平線》(2009年)

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 展示室全体を使った大規模インスタレーション作品を展示できるのが特徴の21美。ブラジルの作家エルネスト・ネトの《身体・宇宙船・精神》(二〇〇四年)は、鑑賞者が作品に触れ、香りも作品に取り込まれた体験型の作品だ。オラファー・エリアソン《水の彩るあなたの水平線》(〇九年)は、鑑賞者が踏んだ板によって水槽に波紋をつくり、その揺れの光が円形の展示室の壁に虹となって表現される。

ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ《世界の終わり》(2012年)

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 韓国の作家ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホの映像作品《世界の終わり》(一二年)は「現在地−過去の参照と未来の創造」という全体のテーマを象徴する。「過去」の男性アーティストと、その作品を調査する「未来」の女性の物語が左右のスクリーンに映し出され、鑑賞者の現在の位置が実感させられる。二人は金沢市金石地区で撮影した新作を制作中でもある。

 「芸術と生命工学の交差」をテーマとした部屋では、音楽家やくしまるえつこが「人類滅亡後の音楽」をコンセプトにバイオテクノロジーを用いて制作した音源と遺伝子組み換え微生物で制作した作品《わたしは人類(金沢バージョン)》(一七年)を紹介。アートが最先端の科学ともかかわって展開していることを実感させる。

照屋勇賢《金沢21世紀美術館》(2019年)作家蔵CourtesyoftheArtistandYumikoChibaAssociates Photo:YukenTeruyaStudio

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 「抽象的な価値」と題された展示室では、照屋勇賢が、モノポリーのお札を素材に細かな細工で21美の建物を表現した新作を展示した。米国の国家行事の会場にもなるワシントン大聖堂、カトリックの総本山サン・ピエトロ大聖堂とともに並び、政治や宗教、美術もまた資本主義から逃れ得ないことをアイロニカルに表現している。

 展示室外の交流ゾーンでは、劇団も主宰する高山明が《マクドナルドラジオ大学》を展開。世界的ハンバーガーチェーンを大学に見立て、来場者はカウンターで飲み物とともに受信機を受け取り“講義”を聴講するという参加型の作品。“教授”は、なんらかの理由で母国を離れた移民や難民で、インドネシア人の「ムスリムとして日本で生きる」、シリア人の「廃虚の未来」など多彩なテーマの十六の授業がある。

《マクドナルドラジオ大学》について説明する高山明さん(奥左)

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 21美が開館から歩んだ十五年の間に世界は激しく動いてきた。コレクション展は、作品とキュレーター(学芸員)の問題意識を通し、時代や社会にどう向き合っていくかについても考えさせてくれる。

     ◇

 現在地[1](十二月十九日まで)と[2](展示替えがあり、前期は十二月十九日まで、後期は来年二月四日〜四月十二日)に分けて、[1]で四十五作家の約七十点、[2]で七十五作家の約百四十点を紹介する。

 

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