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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】(35)  能「松風」 死後も湧く姉妹の恋心

行平の形見を抱いて泣き伏す松風(左)。右は村雨=2004年9月5日、石川県立能楽堂で(金沢能楽会提供)

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 金沢能楽会の十一月定例能で能「松風」が上演される。誰もが心打たれる名曲中の名曲。独特の作能法が感動を呼び起こす。

 主人公は須磨の浦で汐汲(しおく)みを生業(なりわい)とする松風(シテ)、村雨(ツレ)の姉妹。配流となった在原行平の寵愛(ちょうあい)を受けたが、行平は三年で帰京し、間もなく死去。それでも姉妹は待ち続けたという。

 通常、女性の能は前半に里の女が現れ、その地に伝わる悲恋を旅僧に語り、後半に主人公の霊になって再登場する。つまり、前半は普通の人間が登場するのである。

 しかし「松風」では最初から、幽霊となった汐汲みの姉妹が現れる。登場の囃子(はやし)は「真ノ一声」。神能用の荘重な旋律で、いきなりただならぬ雰囲気を感じるだろう。

 真っ白な装束の姉妹。汐汲み作業をすると、それぞれの桶(おけ)に月が映っているのに気づく。♪月は一つ、影は二つ、満つ汐の…。月はもちろん行平。三角関係だが、二人の胸は恋で満たされ高鳴るのだ。

 作業を終え、旅の僧(ワキ)に宿を貸す松風ら。思い出を語るが、行平が形見に残した烏帽子(えぼし)、狩衣(かりぎぬ)を見ると、かえって恋に責められ苦しいと訴えだす。それでも形見を着て舞う松風。笛が狂乱の気分で吹き始める。さらに、行平の面影を重ねた松に抱き付き、浮き立つ舞に妄執がにじむ。

 抑えられない思いを次第次第にはじけさせる手法。古能を改作したという観阿弥・世阿弥の傑作である。(笛)

◇十一月定例能番組(11月3日午後1時から石川県立能楽堂)

 ▽能「松風」(シテ高橋右任、ツレ高橋憲正)

 ▽仕舞「実盛」(シテ広島克栄)

 ▽狂言「文相撲」(シテ炭哲男)

 ▽能「巻絹」(シテ福岡聡子)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料。(問)同能楽堂076(264)2598

 

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