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北陸文化

【舞台】「世界の果てからこんにちは」高校生限定ツアー

聖地・利賀で本物 胸に響く 金沢21美が企画

 「高校生に本物の舞台芸術を見せたい」と金沢21世紀美術館が初めて企画した「劇的!バスツアー」に同行した。富山県南砺市利賀村で開かれていた世界の演劇人が集うシアターオリンピックス最終日の二十二日、日本を代表する演出家・鈴木忠志さんの代表作の一つ「世界の果てからこんにちは」。土砂降りの中での野外劇ながら、迫力の花火が打ち上がり、雨をも演出にしてしまう圧倒的な舞台に、参加した二十二人の高校生らは感激しきりの様子だった。

観劇の前に演出家の島貴之さんからレクチャーを受ける高校生たち=22日、富山県南砺市利賀村で

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 同美術館では、館内のシアター21で舞台芸術の制作も行っているが、本年度はあえて予算の一部を、次世代の舞台芸術を担い、新たな観客にもなっていくであろう高校生をターゲットにした観劇に振り向けた。ツアーは食事代を除き無料だ。

 会場の利賀芸術公園は、もともとは東京で早稲田小劇場を主宰していた鈴木さんが一九七六年に拠点を移し、劇団SCOTとして活動を始め、その後、古代ギリシャを思わせる野外劇場や稽古場、宿舎などを増設。国際演劇祭が毎年行われ、世界の演劇人に「聖地」の一つとも言われるようになった。

 ツアーにはナビゲーターとして利賀演劇人コンクールで優秀演出家賞も受賞している島貴之さん(石川県野々市市、劇団aji主宰)が参加。観劇の前には、廃校を利用した演劇関係者の合宿所にもなる施設「スターフォレスト利賀」で、島さんが鈴木さんの作品世界をレクチャーし、高校生が作品のせりふを読むワークショップも行った。夕食を終え、野外劇場に到着する頃には雨が降り出し、開場まで長く待たされても期待感が上回る。

 「世界の−」は、敗戦後の日本人の精神性をテーマにした鈴木さんの代表作。さまざまな演劇からの引用によるせりふで成り立ち、安易な解釈を許さない。それ以上に、暗闇の中で海外からを含む大勢の観客が作り出す雰囲気、雨にも全く動じることのないプロの演技、歌謡曲に合わせたコミカルな演出、効果的に打ち上がる圧倒的な迫力の花火と歓声で、雨がっぱを着てもずぶぬれになるほどの雨も忘れ、高校生たちと共に舞台に見入った。

高校生たちも見た鈴木忠志さんの代表作「世界の果てからこんにちは」=富山県南砺市利賀村で

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 「言葉では言い表せないほど感動」「音楽、動き、表情、言葉、どれも一瞬一瞬を見過ごしたくないくらい」「『戦争がダメだ』ということは教科書や本を読めば分かるが、当時の人の感覚を描けるのは演劇ならでは」−。終了後のアンケートに残された言葉は、高校生たちの胸に残したものの大きさを物語る。

     ◇

 ツアーは、第二弾として十一月十六日に兵庫県西宮市の県立芸術文化センターである「コンドルズ」の公演、第三弾は十二月十五日にりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館での「Noism1(ノイズムワン)」の新作公演を予定。このほか来年三月まで21美のシアター21で行われる演劇やダンス、映像などの公演についても無料の高校生限定枠を設ける。詳細や申し込みは21美ホームページで。 (松岡等)

 

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