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北陸文化

【映画】「えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋」21日から金沢で上映

「えんとこの歌」について語る伊勢真一監督=中日新聞北陸本社で

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伊勢真一監督に聞く

 脳性まひで三十五年間寝たきりの遠藤滋さん(72)=東京都世田谷区=と介助者らの日常を記録した映画「えんとこの歌」が二十一日から、金沢市のシネモンドで始まる。伊勢真一監督が、入所者十九人が殺害された相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の事件を契機に、友人でもある遠藤さんの生きざまを改めて撮影した。遠藤さんの「自らを他人と比ぶることなかれ 同じいのちは他に一つなし」の短歌が胸に響く。

 伊勢監督は立教大時代、学生運動を通じて遠藤さんと知り合った。病気の進行で三十代後半で寝たきりとなり、食事や排せつなど二十四時間体制での介助が必要だが、その生きざまに触れた介助者は心を通わせている。「えんとこ」とは「遠藤滋のいるところ」でもあり「縁のあるところ」でもある。

「えんとこの歌」の一場面。介助者らに囲まれ、笑顔の遠藤滋さん(中央)=いせフィルム提供

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 一九九六年から三年間撮影した映画「えんとこ」(九九年)の続編。やまゆり園の事件から間もない二〇一六年秋から二年半にわたり撮影した。遠藤さんの「まさに命がけで生きている」(伊勢監督)姿は美しくもある。毎朝の強烈な痛みと闘うために聞くベートーベンの弦楽四重奏。投薬後の一杯のコーヒーはなんともうまそうだ。遠藤さんに共感し、時に励まされもする介助者たち。「寄り添うんじゃなく、寄り合っている」と話す介助者の言葉には実感がこもっている。

 遠藤さんが短歌を詠むようになったのは、自由に話すこともままならなくなってから。事件を引き起こした植松聖(さとし)被告が、切りつけるかどうかの線引きに「声をかけて返答があるかどうか」と語ったことに伊勢監督は衝撃を受けた。映画では「見知りたる男の刃物を振り上げて迫り来るをわが夢に見つ」という歌も紹介される。だが、介助者の一人が語る。「紙一重だと思いますよね、でもね一重は意外に分厚い」

 「今の時代、『分かる』ということを多くの人が大前提にしている。でも、分かり合えなくても人と人との関係が一緒に深まっていくことがあるはず」と伊勢監督。「やまゆり園の事件を自分たちとは無縁ごととは思わず、立ち止まって考える必要がある」と力を込める。

 シネモンドで二十三日午後零時五分からの上映終了後、伊勢監督が舞台あいさつする。 (松岡等)

 

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