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北陸文化

【現代美術】壁は乗り越えられる

スタッフとともに金石の祭りの風景を撮影するムン・キョンウォンさん(右端)とチョン・ジュンホさん(左端)=4日、金沢市で

写真

韓国の現代美術ユニット

ムン・キョンウォンさん

チョン・ジュンホさん

 韓国の現代美術を代表するムン・キョンウォンさんとチョン・ジュンホさんの男女二人のユニットが金沢21世紀美術館の企画で、昨年から金沢市金石地区で映像作品の制作に取り組んでいる。今年二〜三月にかけての滞在に続き、七月には大野湊神社の例大祭なども撮影。来年二月の完成を目指す作品について、二人は「金石で見た風景は現代の鏡のよう。作品は誰にも自分たちの問題として受け取ってもらえるのではないか」と語る。 (松岡等)

 二人が、国ごと、場所ごとに、そこでしかできないサイトスペシフィックな共同作品を発表したのは二〇一二年、五年ごとにドイツで開かれているドクメンタが最初。その後、米国シカゴやスイス・チューリヒ、イタリアのベネチア・ビエンナーレ、東京、英国リバプールなど各国で制作してきた。昨年は金沢市中心部で旧パン工場を舞台にしたインスタレーション作品も披露している。

 しかし、二人が生み出す映像は土着的なドキュメンタリーとは対極にある。「現実と非現実的な境界を探している」とムンさん。高い技術力のある映像チームが現実を切り取りながら、コンピューター・グラフィックスも活用し、非現実的とも思えるような美しさと静けさをたたえているのが特徴だ。

金沢で映像制作「金石の風景現代の鏡のよう」

 リサーチを含めて金石には計四度、訪れた二人。住民との交流も重ねながら、二度の撮影はほぼ終了。チョンさんは「最初に金石に来た時に、通りにはほとんど人通りがなく、ゴーストタウンのように思えた。海岸にはゴミが打ち上げられていた。しかしそれは日本だけでなく、韓国も同じ」。かつては北前船で栄えた金石という土地の歴史も素材に、人類が地球規模の環境変化をもたらした新たな地質時代「アントロポセン(人新世)」を象徴するような映像になりそうだ。

 日韓の政府間の関係が戦後最悪とも言われる中で日本での作品制作になった。「アーティストとは、国籍や国境の壁を越えていく存在。現代の社会は、たくさんのボーダーをつくりたがるが、もともとは同じ家族だというビジョンを提示することだと思う」とチョンさん。

 楽観的にも聞こえるが「アメリカと中国など、国同士の摩擦は世界中にあり、日韓だけではない。私たちはコスモポリタンであり、壁を乗り越えるために作品を作っているし、できると信じている」。こういう時期だからこそ、その楽観主義が必要なのかもしれない。

 

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