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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】 33 能「玉葛」 原典にない秘めた思い

能「玉葛」の後シテ。妖艶な姿だ=2008年10月5日、石川県立能楽堂で

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 筋書きがあいまいなのに人気曲という不思議な能がある。金沢能楽会の九月定例能で上演される「玉葛(たまかずら)」。魅力の秘密は…。

 下敷きになっているのは『源氏物語』の玉鬘(たまかずら)。下の漢字を観世流以外は「葛」としており、能の独自脚色をアピールしたのだろうか。

 原典のヒロインは、源氏との密会中に怪死した夕顔の娘。四歳で夕顔の乳母と九州に渡る。二十歳の美しい女性に成長するが、田舎の有力者たちからしつこく求婚され、乳母とともに都に逃げ帰る。運よく源氏の養女となるものの、やはり男たちから言い寄られ、源氏すら添い寝に及ぶ始末。運命に翻弄(ほんろう)された女性のイメージが強い。

 能は違う。玉葛の霊(後シテ)は「払えど払えど執心の、長き闇路や黒髪の、あかぬやいつの寝乱れ髪」と恋に苦しむ様を激しく訴えるのだ。恋の相手は明かされない。原典とのギャップに戸惑い、もどかしい気分にさえなる。

 他人からは見えない苦悩、人に言えないから悩む状況を描いたのか。初瀬川の急流をこぎ抜けて観音に参る、白い衣を着た前シテの清らかさ、左胸に髪をひと房垂らし、寝乱れ髪を連想させる後シテの妖艶さ。こうした姿は、胸の奥に秘めた思いを伝える仕掛けか。

 不可解故にさまざまな解釈がなされている玉葛。せっかくのあいまいさ。理屈を捨てて楽しむべし。(笛)

◇九月定例能番組(9月1日午後1時から石川県立能楽堂)

 ▽能「玉葛」(シテ藪俊彦)

 ▽仕舞「経政」(シテ田屋邦夫)

 ▽狂言「酢薑(すはじかみ)」(シテ能村祐丞)

 ▽能「融」(シテ高橋憲正)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料、(問)同能楽堂=電076(264)2598

 

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