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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】32 能「井筒」 慈悲の光注ぐ優しい曲調

業平の装束を着た紀有常の娘の幽霊。ススキと井戸が夜の寺の寂しさを演出する=2006年9月10日、石川県立能楽堂で

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 八月は金沢能楽会の定例能が休演。例年、毎週土曜日に催される「観能の夕べ」から特別公演の曲を紹介してきたが、ことしは今月二十七日にあるために、来月最初の公演から「井筒」を取り上げる。

 物語は「伊勢物語」第二十三段が下敷き。井戸端で遊んだ幼なじみが夫婦となる。後ろ盾だった女の親が亡くなり、男は別の女に通いだす。不愉快な風も見せない妻。男は出かけたふりをして様子をうかがうと、夜の山道を行く夫を心配する歌が聞こえた。心打たれた男はよそへ通わなくなった。

 能は男を在原業平、女を紀有常の娘とし、女の幽霊(シテ)が、夜の在原寺で旅僧(ワキ)に二人の物語を語る。さらに僧の夢の中で、業平の装束を着て舞い、井戸の水に映した男装の自分に業平の面影を見て、陶然となるのだ。

 世阿弥の名曲。登場直後のシテ謡に注意したい。「暁ごとの閼伽(あか)の水(仏に供える水)。月も心や澄ますらん」。後を向いて曲のテーマを謡うのだ。

 月の光を、迷いを照らす仏の導きに重ねている。舞の後にも「月ぞさやけき」を二度も朗唱する。能に多い妄執や恨みがない優しい曲調は、ここからきているのだ。全編に注ぐ慈悲の光を感じつつ鑑賞しよう。(笛)

 ◇観能の夕べ番組(午後5時から石川県立能楽堂、7月6日分を除く、人名はシテ)

 ▽7月13日 狂言「狐塚」(清水宗治)能「蝉丸」(シテ島村明宏、ツレ佐野玄宜)▽20日 狂言「舟ふな」(能村祐丞)能「経政」(福岡聡子)▽27日《特別公演》 仕舞「笠之段」(大坪喜美雄)狂言「佐渡狐」(能村祐丞)能「殺生石・白頭」(宝生和英)

 ▽8月3日 狂言「昆布売」(若生敏郎)能「井筒」(高橋右任)▽10日 狂言「鬼瓦」(山田譲二)能「養老」(広島克栄)▽17日 狂言「二人大名」(炭哲男)能「是界」(高橋憲正)▽24日 狂言「宗八」(中尾史生)能「野守」(松田若子)▽31日 狂言「膏薬練」(シテ炭哲男、アド炭光太郎)能「須磨源氏」(渡辺茂人)

 ▽入場料=1000円、特別公演3000円、いずれも高校生以下無料。(問)同能楽堂=電076(264)2598

 

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