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北陸文化

【美術】慕われた画材店創業者 富山県上市町「月光荘おじさん展」

橋本兵蔵さんの生涯たどる

(上)「月光荘おじさん」として親しまれた橋本兵蔵さん(下)コバルトブルーのオリジナル絵の具の完成を祝う画家たちの寄せ書き(1942年)

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 東京・銀座で創業百二年を迎えた画材店「月光荘」。その創業者で、日本を代表する多くの画家、文化人らから愛された富山県上市町出身の橋本兵蔵さん(一八九四〜一九九〇年)の生涯を紹介する「月光荘おじさん展」が、故郷の西田美術館で開かれている。二十一日まで。

 中学を卒業後、橋本さんは長男として家業の農業を手伝っていたが、東京へのあこがれから十八歳で上京。さまざまな職業を経ながら、歌人の与謝野鉄幹・晶子夫妻との出会いをきっかけに、二十三歳で画材店を創業する。絵の具などの輸入から始め、やがては初めての純国産の絵の具を開発するまでに。店にはサロンも作られ、画家だけではなく、建築家や音楽家などが集う文化の拠点になった。

 月光荘の店名は、フランスの詩人・ヴェルレーヌの詩から。創業当時に晶子ははなむけとして「大空の月の中より君来しやひるも光りぬ夜も光りぬ」と歌を送った。会場には晶子からの手紙も展示する。

 このほか愛用した橋本さん愛用のベレー帽や、オリジナルのコバルトブルーの絵の具製造の成功を祝う画家たちからの寄せ書きなど、ゆかりの品々が並び、交流があった小磯良平、猪熊弦一郎、脇田和、宮本三郎、藤田嗣治ら日本を代表する画家らの作品も。

 七日に会場であったトークとライブのイベントでは、三代目の店主である孫の日比康造さんが「富山の風景の美しさをよく語っていたが、一度も富山に帰ることはなかった。農家の長男が家を出たことについて何がしか思いがあったのでは」と話した。

 会場を訪れた石川県津幡町のエッセイスト、水野スウさんは、学生時代から月光荘に通って橋本さんにかわいがられた。やがて手作りのカタログの文章を校正するようになり、結婚後に石川に移住後も「往復書簡」のようにして文章を直し続ける交流が続いた。今も「月光荘おじさん」の手紙やオリジナルのバッグを大切に保管している水野さんは「おじさんが百年を経て故郷の人たちに迎えられたことが、自分のことのようにうれしい」と感慨深げに話した。(松岡等)

 

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