トップ > 北陸中日新聞から > 北陸文化 > 記事一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

北陸文化

ダーク・ツーリズム 今後の課題

ダーク・ツーリズムを考えていく上で「複数の視点を取り入れていくことが重要」と語る米ハーバード大のアンドルー・ゴードン教授=金沢市の金沢勤労者プラザで

写真

アンドルー・ゴードン教授(米ハーバード大)金沢で講演

 日本の近現代史を研究する米ハーバード大のアンドルー・ゴードン教授が、「日本の『ダーク・ツーリズム』:グローバル社会と地域の課題 近現代史の光と影に迫る」と題し金沢市内で講演した。ゴードン氏は、近代史と「ダーク・ツーリズム」を考える今後の課題として、歴史には明暗両面があり、複数の視点を取り入れることが重要だと強調した。

 ゴードン氏はダーク・ツーリズムを「災害、苦難、死など悲惨な歴史の舞台を観光の対象とすること」と定義。ポーランドのアウシュビッツ、広島の原爆ドーム、米国の奴隷市、東日本大震災などの災害遺構を挙げた。

 その上で、歴史的な遺産には複数の視点があり得る例として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産となった「明治日本の産業革命遺産」を巡る日本と韓国両方政府の議論に着目。韓国側が日本が朝鮮半島からの強制労働を含めるべきだと主張したのに対し、日本側が強制労働のなかった明治期だけを対象にするとしたことや徴用労働は当時としては違法ではなかったとし、西洋諸国以外では初めての産業革命の肯定的な側面を強調した。

 この議論の例を通してゴードン氏は「歴史は一色では語れず、複雑であるからこそ面白い」と指摘。「経営者側と労働者側が和解した面もあり、明暗の両面が混ざっていることがおもしろい」と述べた。

 ダーク・ツーズリムでの好例としては「博物館 網走監獄」(北海道)で囚人の強制的労働の負の側面と同時に道路につながった肯定的な面が紹介されていることや、「大牟田市石炭産業科学館」(福岡県)で来館者の声を発信していることを紹介した。

複数の視点欠かせない

 これらの例を通してゴードン氏は、ダーク・ツーリズムに必要な明暗の複数の視点を取り入れるための条件として、「国や商業ベースの大組織による上からの視点よりも地元のローカルな視点で考えるほうが望ましい」とする一方、地元が一枚岩でない場合やグローバルな注目を集めた場合の変化などにも着目することが課題だとした。

 会場からの「地元には悲しみに触れられることで傷つく人がいると思うが、その場合はどう考えればいいのか」という質問に、ゴードン氏は「一つの解決方法は時間。原発事故のあった福島も、どのような記念碑や博物館を作るべきか意見は割れている。時間をおいて地元でコンセンサスが得られるまで待ちましょうというのが一番いいやり方だと思う」と話した。

 ゴードン氏は一九五二年米ボストン生まれ。ハーバード大で博士号取得。九五年から同大歴史学教授。九八〜二〇〇四年および一一〜一二年に同大ライシャワー日本研究所所長。日米の関係機関と協力し、「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」の構築と運営を主導した。専攻は日本近現代史。著書に「日本の200年:徳川時代から現代まで」、編著に「歴史としての戦後日本」ほか多数ある。今後、ダーク・ツーリズムの研究に本格的に取り組むという。

 講演会は北陸の大学関係者でつくる「学際としての“北陸学”の構築を目指して」研究グループが主催した。日本でダークツーリズムをいち早く提唱してきた井出明・金沢大准教授は講演に先立ち、金沢市の卯辰山にある「長崎キリシタン殉教者の碑」、石川県内灘町で米軍砲弾試射場に反対した内灘闘争を伝える遺構などについて紹介した。

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索