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北陸文化

【コミュニティシネマ 街中銀幕から】 時代の空気をまとった作品

 『共犯者たち』『スパイネーション/自白』というドキュメンタリー作品を上映する。ともに監督は、韓国の公営放送局MBCの名物ジャーナリストだったチェ・スンホだ。二〇一二年にMBCを不当解雇されたのち、市民の支援で立ち上げた独立メディア「ニュース打破(韓国探査ジャーナリズムセンター)」で調査報道を続け、両作品を発表した。

 『共犯者たち』(一七年)は、李明博と朴槿恵政権時代の約九年間にわたる言論弾圧の実態を告発した作品だ。〇八年、「米国産牛肉BSE問題」などで国民の支持を失いかけた李明博政権は、メディアへの露骨な政治介入を始めた。公共放送局では批判分子が排除され、政権が送り込んだ新経営陣は解雇を乱発、その結果、公共放送局は、政府発表を報じるだけの「広報機関」となっていった。解雇された記者たちは独立メディアを立ち上げ、メディアの存在意義をかけて、その言論弾圧の実態を明らかにしていく。

 『スパイネーション/自白』(一六年)は、国家情報院による<北朝鮮スパイ捏造(ねつぞう)事件>の真相を暴く。一三年、韓国の国家情報院が、脱北者だったソウル市の公務員が北朝鮮のスパイとして拘束された。国家情報院容疑者の提示する根拠が自白のみだったことに疑念を持ったチェ・スンホ監督が取材を進めると、国家情報院の協力者が証拠書類の捏造を暴露する遺書を残して自殺を図り、被害者は脱北者だけではなかったことが判明する。KCIAの時代から四十年にわたるスパイ捏造の深い闇に切り込んでいく。

 韓国の内情を告発した二作品だが、さまざまな国の観客が自国のことを想像するだろう。遠い土地のことも自分の身の回りのことも、国家規模のことも個人規模のことも、どのように受け取るかは観客次第だ。

 ドキュメンタリー、フィクション問わず、特にテーマ性を持った作品は、描かれている内容のみならず、いつ、誰が、なぜ、その作品を世に送り出したのか、そして観客からどのように受け止められたのか、作品をとりまく状況も含めて見ることに意味がある。

 過去や未来を舞台にしたエンターテインメント作品だったとしても、制作直後、五年後、十年後など鑑賞する時期によって、制作当時とは違う視点が生まれることもある。作品の中には必ず制作された時代の空気が漂っているからだ。

 『共犯者たち』は二十二日から二十八日に上映。『スパイネーション/自白』は二十九日から七月五日まで。同じ日程で「慰安婦問題」をテーマにしたドキュメンタリー映画『主戦場』も予定する。これも間違いなく、時代の空気を切り取った作品だ。 (シネモンド支配人・上野克)

 

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