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北陸文化

【個展】漆の精神性世界に発信 田中信行さん(金沢市在住)

ドイツ(ミュンスター漆芸美術館)で初の個展

田中信行さんの作品が並ぶ展示会場=ドイツ・ミュンスター漆芸美術館で

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 漆塗りの伝統的な技法で現代的な造形を生み出している金沢市在住の漆造形作家・田中信行さん(59)=金沢美術工芸大教授=の個展が昨年からドイツで開かれている。カイザースラウテルン美術館に続き、現在は欧州で唯一、漆など塗料による美術を専門とするドイツ・ミュンスター漆芸美術館で開催中。自身、欧州で初めてとなる個展に「欧州での第一歩」と、意義を強調する。(松岡等)

■十年越し

 ドイツでの個展のきっかけとなったのは二〇〇七年に東京・六本木の森美術館で開かれた現代美術の展覧会「六本木クロッシング2007 未来への脈動」に出品したこと。ドイツの関係者が関心を寄せ、十年越しで実現した。

 「かつて『ジャパン』と呼ばれたように、漆による器や家具は調度品として欧州では人気があったが、自分の作品はある種の彫刻、造形作品として現代美術の枠組みの中で見てもらっている。反響も大きい」と手応えを感じている。

 原始の記憶を呼び起こすような造形は、伝統的な乾漆の技法の生み出す滑らかさと光沢で際立つ。生き物の皮膚のようでもあり、官能的でもある曲線と凹凸は見る方向によってさまざまに表情を変える。代表的な約二十点を出品している。

■「合鹿椀」

田中さんの個展が開かれているミュンスター漆芸美術館

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 乾漆は麻布と漆によって胎をつくる伝統的な技法。田中さんは、発泡スチロールの原型に麻布を貼り重ねて素地をつくって固め、型から切り抜いた後に塗りを重ね、表面を磨き上げる。

 現代美術として紹介されることも多いが、今もなお能登地方に古くから伝わる「合鹿椀(ごうろくわん)」にもひかれるという田中さん。そこに見るのは、漆という素材そのものが持つ時間、深い精神性なのかもしれない。

 「漆はアジアで太古から使われてきた自然素材であり、『塗る』『磨く』という行為に精神性が宿る。造形だけでなく、そのことを含めて知ってもらいたい」と、今後の海外での展開にも意欲的だ。

「Flow5(ローマ数字の5)」(2018年、248センチ×34センチ×24センチ)

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■新しい扉

 「造形に取り組む作家はほかにも多く、新しい扉を開いた意味は大きいはず」と田中さん。建築にも関心を寄せているといい、「いずれは空間すべてを漆で囲むような作品にも取り組みたい」と話した。

 ミュンスターでの個展は三十日まで。

ドイツでの個展を「欧州での第一歩」と話す田中信行さん=金沢市内のアトリエで

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たなか・のぶゆき 1959年東京都生まれ。東京芸術大卒、同大大学院修了。金沢美術工芸大教授。2003年にタカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞、12年にMOA岡田茂吉賞大賞。今年は石川テレビ賞も受賞した。作品は豊田市美術館、金沢21世紀美術館、森美術館、東京国立近代美術館のほか、海外でもメトロポリタン美術館(米国)をはじめ英国、中国、ドイツなど多数の美術館に収蔵されている。

 

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