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北陸文化

【THE ARTIST】美術家 風間サチコさん

〜100年後、見た人が 捨てられないような おぞましい作品を残したい〜

《ディスリンピック2680》2018年242.4×640.5センチ

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 自室の壁に「一撃必殺」の手書き文字。漫画『空手バカ一代』から取った言葉で、美術界で生きるためのスローガンにしているという。「分かりやすさではなく、ボディーブローのようにじわじわと効いて、やがて死に至らせる」と風間サチコさんは説明する。現代美術的な版画で注目されている作家だ。

 近作《ディスリンピック2680》はまさに、一目見たら動けなくなるような迫力がある。岩山を削って建設した競技場の中心には、日の丸に似た旗がなびく。健康的な青年の隊列に、一糸乱れぬ少女のマスゲーム。大画面に不穏さが漂い、戯画的なのに笑えない。描いたのは「架空のディストピア(反理想郷)、架空のオリンピック」だというが…。

 「戦前で特に重要な年は一九四〇年です。国民の健康を統制して出征させるための国民優生法が制定され、『皇紀二六〇〇年』を奉祝する『幻の東京オリンピック』も予定されていました」。過去の全体主義や優生思想を綿密に調べ、「皇紀二六八〇年」に当たる来年の東京五輪のイメージも重ねている。

 「子どもの頃から世の中を裏側から見ていた」という。ぜんそくを発症し、小学三年で不登校に。全寮制の養護学級で、髪形まで同じという厳しい規律を求められた。「これって『健康体』なのか」と疑問を持った。

 版画を専攻したのは、大正期の詩集の挿絵に憧れたから。だが、「そこに現代美術のようなコンセプトを持ち込んでみた。古今東西のものを一つの鍋で煮る時に、白黒の版画はちょうど良い」。広告の新築マンションを版画にすると、消費社会の陳腐さが浮き上がった。その後は、植民地主義や自然破壊、監視社会、原発なども作品に。共通テーマは「近代悪との対峙(たいじ)」。ドイツの哲学者ニーチェの著作から着想を得たという。

 六月からの個展は、建築家丹下(たんげ)健三が構想した都市開発の「東京計画1960」を起点に、この六十年の東京を再検証する試みだという。ただし「一過性の風刺画として消費してほしくない」とも。「百年後に時事問題が風化しても、見た人が捨てられないような、おぞましい作品を残したい」(谷岡聖史)

※「ジ・アーティスト」は今回で終わります。

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かざま・さちこ 1972年、東京都生まれ。武蔵野美術学園版画研究科修了。昨年、初の作品集『予感の帝国』(朝日出版社)を出版。2006年に岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞、今年4月に第1回 Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)受賞。47歳。

「東京計画2019 vol. 2 風間サチコ バベル」展は7月13日まで、東京都千代田区東神田1の2の11、ギャラリーαMで。日・月曜と祝日休廊。

 

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