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北陸文化

【美術】誰もが光を目指して 大岩オスカールさん 金沢21美で個展

東京に暮らしていた時代の風景を描いたことを語る大岩オスカールさん(中央)=金沢市の金沢21世紀美術館で

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 金沢21世紀美術館で開催中の企画展「大岩オスカール 光をめざす旅」は、ブラジルの日系二世の大岩オスカールさん(53)の二〇〇〇年以降の作品を中心にした大規模個展だ。生まれ故郷のサンパウロ、十年を過ごした東京、現在拠点とするニューヨークを行き来しながら制作を重ねる大岩さん。モチーフは、雑多な東京の下町、同時多発テロ以降のアメリカ、ブラジルの密林などさまざまだが、時代と社会を俯瞰(ふかん)し、物事が持つ光と闇の両面をダイナミックな構図と独特のユーモアで描く大画面の作品はどれも見応え十分だ。

 サンパウロ大で建築を学んだ大岩さんは、一九九一年、二十五歳の時に東京へ。途中ロンドンへの留学をはさみながら東京で画家としての地歩を築いた。

 「たまたま日系人の家に生まれ、八〇年代にサンパウロ・ビエンナーレなどを見て、旅にあこがれた。大学を出た当時、ブラジルの経済が変わる中で、日本ではバブル経済で働く人が足りず日系人に就労ビザを出すようになっていた」

 東京の建築事務所で働きながらアパートで絵を描いた。そのとき通ったという下町の居酒屋をモチーフにした「北千住」(二〇一〇年)には、雑多な日本社会が凝縮されている。

 二〇〇二年にニューヨークに拠点を移した大岩さん。「9・11」の後のアメリカ社会は、どこか「おびえているように見えた」。そしてアフガニスタン、イラクとの戦争、オバマ大統領が誕生、トランプ政権…。

 夜の摩天楼を巨大な船が航行する作品「ゴースト・シップ」(二〇一四年)は、かつて港があったマンハッタンの摩天楼の上を巨大な船が漂流する。それはアメリカ社会を象徴しているかのようだ。

 「日本人がブラジルに移民したり、自分が日本に留学したりしたのも、時代の流れがあったから。その中でアーティストとして自分に何ができるかを考えて仕事をしている」。明るい色調で描かれた「キノコの森」(二〇一六年)。透明な巨大なキノコの下にあるのは、事故を起こしたチェルノブイリ原発や福島第一原発だ。

「5つの巣」2012年、油彩/キャンバス(縦227センチ、横555センチ)

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 しかし、そんなうまくいかない社会にも希望があるはずだと、作品に描かれる「光」は語っているかのようだ。ブラジルの密林に光の粒が舞う作品「5つの巣」(二〇一二年)では、木々の幹からのぞく小さな明かりの中に「人々の暮らし」がのぞく。大岩さんは展覧会の図録にこう記している。「自分の中で自分が目指せる幸せを育てていくのが大事」

 展覧会は油彩画を中心に、滞在制作した幅二十七メートルの巨大ドローイングなど六十五点を展示。八月二十五日まで。

 

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