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北陸文化

【美術】暮らしとかたち つなぐ 黒部市美術館企画展

セシル・アンドリュさんの《いま・ことば・つなぐ》(2019年、ネット、名札、フランス語辞書の言葉を加工したシール)

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桂樹舎の収蔵品と3人の女性作家作品が共鳴

 さまざまな国の民芸品を集める桂樹舎(富山市八尾町鏡町)の収蔵品と、三人の女性美術作家の作品を併せて展示する企画展「この世界で生きる、日々のかたち−言葉、祈り、道具」が、同県の黒部市美術館で開かれている。民芸運動を主導した柳宗悦が、無名の職人によって作られた品々や使うことの中に見いだした「用の美」と、「もの」に宿る力を純化したような作家たちの作品とが共鳴するかのようだ。

 セシル・アンドリュさんは一九五六年、フランス生まれ、金沢市在住。「言葉」への関心から制作した思索的な現代美術作品を国内外で発表し続けている。今回の展示のための新作「いま・ことば・つなぐ」も言葉がテーマだ。

 天井からつり下げられた六枚の網の目に無数に結び付けられた名札。一つ一つすべてに、フランス語辞書から切り抜いた単語を読むことができないまで太く加工したシールが貼られている。

 「人は言葉に影響され、言葉を通して世界を見ている」というアンドリュさん。現代が言葉が本来持つ意味を失った記号化した世界に生きていることに気づかされる。桂樹舎所蔵の羊皮紙に書かれた「グレゴリオ聖歌」の楽譜がこれに呼応する。

【上】宮永春香さんの作品《FEITICO》(2009〜19年、磁土ほか)【下】野村瑞穂さんの《objects》2019年、陶土ほか

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 編むことは「祈り」にも通じる。一九八〇年金沢市生まれで、金沢美術工芸大講師も務める宮永春香さんは、紙ひもを編んで作った原形に白い泥漿(でいしょう)をかけて焼成、紙だけが焼け、形をもった泥漿を残す手法で、複雑な編み物を作品化している。

 手芸作品を思わせる形のシリーズ「FEITICO(フェティシェ)」の三十六点が壁に並ぶ。それぞれに用途があるように見えながらも不明。それだけに、編むという行為が持つ意味が、より際立って迫ってくる。二〇一一年からのシリーズ「FEITICO−Remains」は、掘り出された遺物を思わせる旧作に、新たに釉薬(ゆうやく)でつやを出した。使い続けることで出る生活道具のつやを思わせる。

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 生活の道具として物を入れる器が、美しさを持つのはなぜか。陶土を滑らかな丸みを帯びた形に成形して生まれる野村瑞穂さん(一九六六年、富山県上市町出身)のシリーズ「objects」が展示室の床に並ぶ。器や椅子などを抽象化した彫刻のよう。

 「もともとは人の体への関心があった」という野村さん。手びねりで生み出す造形は、思わず手を触れたくなるような官能性を帯び、その美しさは、手になじんだ道具が持つ美にも似ている。

 企画した同美術館学芸員の尺戸智佳子さんは「暮らしに使われながら、今は用途が分からなくても鑑賞できる民芸品がある。作家たちの作品と共鳴した物語ができないかと企画した。暮らしの根本を考える機会になってもらえれば」と話す。

 六月二十三日まで。二十九日、五月六日を除く月曜日と五月七、八日は休館。

 

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