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北陸文化

【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】 (16)さよなら、ルルララ

ルルララ最後の営業日は、しんみりとした時間が流れていた=ソウルで

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思い出刻んだライブ

 インディーズ文化の町・弘大を代表するカフェ「一杯のルルララ」が、三月末に閉店した。公園前のビル二階に店を構えて十年、若いミュージシャンを中心とする弘大の人々に愛されていた場所だ。私たちも店を閉めた後にビールを飲みに行っては、知り合いのアーティストや当店の常連さんに出くわし、嬉(うれ)しい挨拶(あいさつ)を交わしたものだ。

 雑然として気の置けない店内には、漫画本や手描きのイラスト、バンドのポスター・CD・Tシャツが所狭しと並んでいた。インディーズミュージシャンによるライブが定期的に開かれ、時には日本のアーティストも出演。大御所フォークシンガーの三上寛も登場するなど、刺激的な舞台に出会うことができた。

「咄咄咄●●哩哩」(禅語、中東の古書に揮毫、2017年)。驚きと感嘆が入り混じった擬音語「咄咄咄(とつとつとつ)」と、歌の合いの手「●●哩哩(ららりり)」。思わず歌いたくなる喜びを表現した語。韓国でハミングの音は「ルルララ」

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 ルルララがオープンしたのは二〇〇八年。店の前には、都市開発による立ち退きに反対し、弘大の音楽家たちが立てこもりライブを行ったうどん屋「トゥリバン」があったことから、アーティストたちが集いだす。以降、若い音楽家に理解ある店主の計らいで頻繁にライブが開かれ、月曜のライブが名物に。そして十周年となる昨年末、連日行われるライブイベント「45日間のインディー旅行」の開催と、そして近日の閉店を発表。物件主から再建築を理由に、とても払えない家賃を要求されてしまったという。

 その四十五日間(終わってみたら五十二日だった)は、韓国の音楽史に残る、心のこもった時間の連続だった。イ・ラン、セソニョンなどルルララに縁のある人気アーティストが登場しては小さな店がパンクし、伝説のバンドも再結成。日本でもファンの多いWEDANCEは、七時間ぶっ通しでライブを行い観客を朝まで沸かせた。

 私たちもルルララという愛ある空間、そして終わりゆく弘大の十年を記憶しようと、そのライブにできる限り足を運んだ。寂しそうに肩を落とすルルララの社長に、何と声をかけていいのか分からなかった。またいつか、彼のユーモアとお人柄が生み出す、ざっくりとして心地良い空間、素敵(すてき)な音楽のある空間を訪れる日が来ればと思う。(しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市生まれ)

 ●は、口へんに羅

 

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