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北陸文化

【能楽おもしろ鑑賞法】29 能「羽衣」 天人の目で眺める世界遺産

羽衣を返してもらえず、衰弱する天人。白い装束は裸を表す=2010年4月11日、石川県立能楽堂で

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 最もポピュラーな能と言えば「羽衣」だろう。金沢能楽会の五月定例能でも組まれた。場面は、ユネスコの世界文化遺産に登録された三保の松原と富士山。情景描写とワキに注目して鑑賞しよう。

 漁師たち(ワキ、ワキヅレ)が登場し「風早(かざはや)の三保の浦曲(うらわ)を漕(こ)ぐ船の、浦人騒ぐ波路かな」と朗唱。漢詩や和歌を織り込み、朝がすみにけむる眺望も描いてみせる。白龍(はくりょう)と名乗る漁師は教養人らしい。立つ雲を見て荒波と思い、釣りをしないで帰る船もあるよ、と茶目っ気も発揮する。

 羽衣を拾った白龍は、返してほしいと迫る天人(シテ)と問答。「本よりこの身は心なき」と衣を隠す意地悪もするが、衰弱する天人を見て返すのだから実は優しい男。交換条件は財宝でも妻にすることでもなく、天人の舞楽を見たい!

 やはり教養人だ。

 衣を着た天人は天上の有様(ありさま)を語った後、「春がすみ、たなびきにけり久方の…」と所の美しさを詩に作って舞う。時は早夕刻。「落日の紅は蘇命路(そめいろ)の山(仏典の赤い高山)を移し」たようで、山の緑には嵐に吹かれた花が降るよ、と鮮やかな情景が展開する。

 羽衣をひるがえし天人は上昇し始める。天上へ帰るのだ。三保の松原が足元に流れ、富士の高嶺はどんどん小さくなる。幕切れは世界遺産を空から眺めた雄大な光景。思い描けば能「羽衣」も違って見えるだろう(笛)

◇五月定例能番組(5月5日午後1時、石川県立能楽堂)

 ▽能「放下僧」(シテ藪克徳)

 ▽仕舞「養老」(シテ佐野由於)

 ▽狂言「清水」(シテ清水宗治)

 ▽能「羽衣」(シテ松本博)

 ▽入場料=一般2500円(当日3000円)若者割(三十歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料。(問)同能楽堂=電076(264)2598

 ※能楽堂の駐車場は工事中。石引駐車場を使えば駐車券がもらえる。

 

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