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北陸文化

【美術】阿部海太さん新作展 オヨヨ書林せせらぎ通り店

古本屋をテーマにした新作展「古本屋エレジー」を開いた阿部海太さん=金沢市長町のオヨヨ書展せせらぎ通り店で

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古書店の懐の深さ描く

 金沢市長町の古書店「オヨヨ書林せせらぎ通り店」で、神戸市在住の画家、絵本作家・阿部海太さん(33)の新作展「古本屋エレジー」が開かれている。古書店という場所でつむがれた本や訪れた人々とのエピソードから書き下ろされた十九点の絵画は、本と古書店に流れるものゆったりした穏やかな時間の豊かさ、哀感を感じさせる。

 同店は開店九年目。これまで二度、同店で展示をしてきた阿部さんが「古書店で生まれる時間や空気感、目に見えないものを表現したらおもしろいのではないか」という思いから、店主の佐々木奈津さんに聞いたり、その文章を読んだりして得たインスピレーションを作品にした。

 板に油彩で描いたのは、赤色が鮮やかなたそがれの時に本を抱えて古書店を出て歩き出す男、夕暮れの河川敷の草むらで読みかけの本を伏せたまま夢見るように眠る少女、店内にも置かれているピアノを暗い中で弾いている姿を思わせる男の背中など。

 「悲しみを帯びた話を含め、いろいろな話を聞いて、古書店というのは人が行き交う場所なんだと感じた。その物語を直接描くのではなく、自分の中でそしゃくして描いた」と阿部さん。展示スペースのほか書棚にも絵が並び、古書とコラボレーションしているかのようでもある。

 「本自体に内包する時間があり、所有者だった人の時間があり、その本が流れ流れてここにたどり着くまでの時間がある。それが何食わない顔をして棚に並んでいるのも面白い。その風景にあるのは寛容さ。今の社会、古本屋さんを必要としている人がどこかにいて、街に欠かせないのでは」

 阿部さんは埼玉県出身。東京芸術大デザイン科卒。ドイツ、メキシコに渡った後、二〇一一年から東京で絵画と絵本の制作を始めた。油彩を中心に神話的な世界をモチーフにしてきたが「今回は日常に近い絵。日常におさまってほしいという気持ちもあって、やや小さめにし、自分で額もつくった」という。

 一二年に本のインディペンデント・レーベル「Kite」を結成。一六年夏から神戸に拠点を移した。著書に「みち」(リトルモア)「みずのこどもたち」(佼成出版社)「めざめる」(あかね書房)。現代を代表する絵本作家三十二人が東日本大震災の起きた日について絵とエッセイを寄せた「あの日からの或(あ)る日の絵とことば」(創元社)にも参加している。

 展示は十四日まで。月曜日休み。最終日のみ午後四時半まで。 (松岡等)

 

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