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北陸文化

【雨乃日珈琲店だより ソウル・弘大の街角から】 (15)弘大を離れた友人

アナカフェのコーヒーとチーズケーキ=韓国・蔚山市内で

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地方都市の愛されカフェ

 弘大(ホンデ)は韓国随一のカフェ激戦区だが、人気が高まり地価上昇の続く近年は、個人経営の味のあるカフェは弘大郊外や地方都市へ離れていく趨勢(すうせい)にある。そんな中で当店近所に長らくあった、韓国人夫婦が経営する「アナカフェ」はお気に入りの場所で、頻繁に通っていた。

 かつて京都とグアテマラで暮らしていた夫婦による小さなお店で、グアテマラの農場から生豆を直接取り寄せ自家焙煎(ばいせん)するのが売りだ。ハンドドリップで丁寧に入れたコーヒーはすっきりとして美味(おい)しく、価格も良心的。そしておふたりの人柄が現れたような、流行を追わない素朴なインテリアがとても心地良かった。奥さんは日本語も流ちょうで、当店で行われたコーヒーイベントの通訳をお願いするなど、外でも親しくさせてもらっていた。

 アナカフェは開業当初は大通り沿いにあったが、やがて裏道に移転。七年間営業を続けるも、昨年十月に弘大を離れ、奥さんの故郷である蔚山(ウルサン)へと店を移すことに。蔚山は釜山に近い、海辺の工業都市だ。

『未覺避喧離世俗。也知習靜愛郊●』(2016年)喧噪を避け世俗を離脱することはまだ知らないが、静閑に慣れ郊外を愛することを知っている。

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 ご近所でなくなったのは残念だが、韓国国内ならどこも遠くない。思い立った先日、蔚山行きの飛行機に乗り、新しいアナカフェを訪ねてみた。連絡もせず突然やってきた私たちを、ご夫婦は嬉(うれ)しそうに迎えてくれた。

 美味しいコーヒーも落ち着く雰囲気も弘大の時と同じ。そして既に近隣住民に愛されている様子で、幅広い年代の人がひっきりなしに訪れているのが頼もしく思えた。弘大と蔚山の違いを聞いたところ、「弘大では九割以上の人がカード払いだが、ここでは五割くらい」と話すのが興味深かった。韓国の急激なキャッシュレス化は、地方都市にはまだ及んでいないようだ。

 韓国は首都圏への人口集中が激しく、人口の50%以上がソウル近郊に住んでいるが、これから徐々に地方都市も面白くなるのだろう。弘大で仲良くしていた人たちが離れていくのは寂しいが、いつの日か彼らを訪ねて地方都市を訪れる楽しみは増えた。(文・清水博之、書・池多亜沙子/しみず・ひろゆき=ライター、いけだ・あさこ=書家、金沢市出身)

●は土ヘンに同

 

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